「えーと……じゃあ筋トレとか走り込みしても無駄なんですか?」 「人によりけりね。まあ貴女の場合は心身のバランス取っておくことも有益よ」 ――美澤エレナと雨宮セシル --------------------------------------------------- |
実際のところ、どの程度まで研究されているんですか。 |
出し抜けになんじゃい。 |
神凪さんとか斑鳩さんの特殊能力ですよ。 |
ああ異能の類か。 しかしそれをわらわに聞くか? |
他に聞くアテもないですし。 |
まあ斑鳩に聞いても隠されたり、黒羽はそっち方面だとあまり興味なさそうじゃしな…… |
ええ。 黒羽さんは個人の能力についてはかなりどうでもいいと思ってますからね。 |
つーてもなあ…… 一般的な知識に関してはおぬしも大抵網羅しとるんじゃないか。 |
それはそうですけど答え合わせも兼ねて。 |
さようか。 |
で、異能についてですが……これ、そもそも“あるらしい”と言われているだけで、存在が確認されたことってありませんよね? |
そうじゃな。 わらわの知る限り人類が科学的手法で異能の存在を確認した例はない。 |
ですよね。 |
神凪や斑鳩がどれだけ先を読むことができても、そのことは本人しかわからん。 黒羽がどこまでも遠くを見ることができても、やはり黒羽にしかわからん。 |
それらの能力を使用中と思われる状況で、使用者の脳波や五感への入力を全て測定しても全然引っ掛からないんですよね? |
本人しか受信できない情報を得た時点で反応は起きるが、その情報がもたらされた経路を全く把握できん、て具合じゃな。 |
ですが常時視覚型の異能を有していると思しき子が戦闘中の負傷により一時的な失明状態となった時、その異能を全く使えなくなったケースもあるわけで。 |
不思議じゃな? となるとやはり目ん玉とかから情報を得てるんじゃねえの。 |
状況からすればそういうことになるわけですが…… |
しかしそれも何を今更というところではあるな。 そもそもヴァルキリーどもはヴァルキリーとして稼働している時点で普通の人体の活動をしとらんじゃろ? |
まあそうなんですけど。 |
で、そのことを踏まえた上で現在の仮説は以下の通りです。 |
ふむ? |
図にしますと……(かきかき |
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こうなります。 |
身体というのは私達の普通の身体ですね。いわゆる人体です。 機体は使用者の力を大幅に強化する外骨格というところです。 |
そして身体とは別に私達にはもう一つのカラダがある。 これは私達の身体にそのまま重なっているのかもしれない。 |
あるいは完全に所在不明なのかもしれません。 発見できていないのだから普通に所在不明なんですけどね。 私としては重なってる説の方が濃厚だと思ってますが。 |
ほうほう。 |
異能は全てこの第二の身体における偏った特徴です。 ヴァルキリーとしての強さもおそらくこのカラダがどれだけ優秀かによって決定します。 |
これまでの数十年でカラダが操る道具については相当に研究が進みましたが、カラダそのものについては全然さっぱりで、取っ掛かりすら掴めていないわけです。 |
そこがよくわかっていれば人工的にヴァルキリーの女の子を生み出すこともできるのでしょうが、わかっていないから全くできないと。 |
……で、そこまで考えたところで気付いたわけですが、永世者の人達って要するに普通の身体を持たない、第二のカラダが剥き出しになっている生物なのではないでしょうか。 |
貴女や六堂さんが食事や睡眠がなくとも問題ない理由もそこにあります。 普通の肉体を維持する必要が最初からないわけですから。 |
ああうむ、それで概ね合っておるわ。 そこまで難解な話でもないわけじゃがやはり三バカとは違うな! |
流石にあの子達と一緒にされるのは…… |
それもそうじゃな。 |