「これでは足りませんね。……倍に増やしちゃいましょう」 ――六堂マリア、試合中に |
美澤さんについてでも話しましょうか。 |
あの赤い人? |
ええ、その赤い人。 たまに黒いけど。 |
結構面白いよね美澤さんって。 この前の試合で相手の武器を奪って棍棒にして戦ってたよ。 そのまま殴り倒してたし。 |
あとねあとね、他には神凪さんに噛み付くのを見たよ。 |
口論か何かでもしてたわけ? |
違うよー そのまま言葉通り噛み付いて装甲を砕いてたよ。 |
どういう戦い方よそれ。 他にもやりようってものがあるじゃない…… |
でも仕方がなかったんじゃないかなー 神凪さんの槍を受け止めたときに両腕のパーツを完全に壊されてたし。 その後には膝も砕かれてたしね。 |
そういうことであれば仕方がな…… いや、そこまでされたのならギブアップするでしょ普通。 |
うん。 足をやられたところで絶対にもうギブアップすると思ったんだけど…… 残った片足で力一杯踏み切って神凪さんに体当たりしてた。 で、もつれあったまま噛み付き攻撃という流れね。 |
よくやるわねえ…… |
だよねー |
…… |
それで……その試合は結局どうなったわけ。 |
そこから神凪さんが美澤さんを引きずり倒して…… 床に転がった美澤さんの肩を踏み付けて…… 押さえ込んだ状態で槍を突き付けて…… |
そのまま撃った? |
うん。 トドメ刺してた。 しかも連射で。 |
トラウマになるんじゃないのそれ。 神凪さんは相変わらず容赦ないわねー |
だって神凪さんだし…… ボクだって似たようなことを前にやられたよ。 |
私だってやられたわよ。 |
じゃ、美澤さんについての話ね。 とりあえず基本的なことからいくわよ。 まず、美澤さんは民間人上がりのヴァルキリーよ。 |
コンバットマシーンとして育てられた神凪さんとか、 ヴァルキリーになった頃には既に軍人もどきだった私とか、 経歴がさっぱりわからない斑鳩さんとは異なるわ。 |
平和な国に生まれたごくフツーの女の子ってやつね。 ヴァルキリーとしては圧倒的多数派のタイプよ。 |
ボクと同じだねー |
で、美澤さんはねー 結構侮れないわよあの子。 |
そうなの? |
経歴を考慮すれば近年希に見る逸材かしら。 少なくとも若い頃の私よりは上よ。 |
ここ数年で他に出てきた強いヴァルキリーといえば斑鳩さんとか六堂さんとか神凪さんとかだけど…… この人達は色々と反則すぎるから比較対象として不適切な気もするし。 |
うん、その人達はちょっとねー |
一般人上がりのヴァルキリーとしては頭一つか二つ抜け出してるわ。 数年後のトップエース候補と見て間違いないでしょうね。 ……それまで生き残ることができれば、の話だけど。 |
美澤さんって試合しかしてないんだから大丈夫じゃないの? |
どうかしらねえ…… 美澤さんのところってお隣とのドンパチがいつ始まってもおかしくないのよねー |
ま、ドンパチといったって数日くらいでしょうけど。 それでも最前線でぶつかり合うヴァルキリー達が次々と死ぬには十分な時間よ。 |
やな話だねー |