「まあ、頭を叩き割られても死ななかった貴女たちのことですからね。 誰か一人くらいは生きていてもおかしくないとは思ってましたけど?」 ――蓬莱ウルスラ --------------------------------------------- |
戦術の話はどこへ行ったの? |
足が生えてどこかへ逃走していった。 今更追いかけても無駄だ。 |
では話の続きをしよう。 異形型の展望についてのな。 |
いやー、でも結局それは使い物にならないんじゃないの……? |
そうだな。 何も策を講じなければ造ったところで無駄に終わるだろう。 |
実際にヴァルキリー製造メーカーは異形型がゴミだと見切って捨てた。 |
だが、その計画が打ち棄てられたままだと思うか? |
今の路線が頭打ちになったらまた別のアプローチということで開発再開とか………あるのかしら? |
最初から異形型に目もくれなかった那岐島と、素早く切り捨てたオルニックにしても、当時の段階では本格的に手を付けるには時期尚早と悟った故に放り投げたという可能性はやはり残る。 |
価値は認めた上で当面は生産の必要無しとの判断でな。 |
異形型が抱えた最大の問題点は、人が人である限りは真価を発揮できないところにある。 逆に言えばそこさえクリアできるのなら大きな飛躍を果たすかもしれんわけだ。 |
だからそれが無理なんじゃないの? |
………なのだよな。 |
この障害を乗り越えるのは実に難しい。 月影の言葉を借りるのならば第二の身体を異形せしめる必要がある。 |
前回多少触れたように人機一体を体現しているような者は確かに有望だが、それとて簡単に持ち得るような資質ではない。 |
私も身体を取り換えて長いものの今の身体については所詮便利な道具程度にしか思っていないからな。 |
となると培養なりその他の手段で最初から異形に適応したヴァルキリーを生み出すのが早いかもしれんわけだが…… |
人工的なヴァルキリーを生み出すのとかそういうのって全然見込み無しなんでしょ。 無理なものは無理でいいじゃない。 |
というかそんな物騒なのあたしも見たくないし。 |
一部の企業国家はその為の手掛かりを既に持っている筈なのだがな。 |
へ? |
異形が使いこなすことを前提とした現物だ。 数は極めて少ないながらも実在する。 |
本当にそんなもんあんの。 |
ある。 |
人間であるヴァルキリーが装備したところで使い物にならん。 何の役にも立たないことからハズレと呼ばれることもある。 |
……それって一般的な知識じゃないわよね? |
当たり前だろう。 企業国家のヴァルキリー部門における秘中の秘だ。 |
トワイライトは確実に保有しているだろうが那岐島やオルニックはどうかな。 まあ早々に異形型を見限ったことを思えば持っていると思うのが自然か。 |
今以上にぶっ飛んだヴァルキリーが跋扈するのなんて勘弁してほしいんだけど…… |
私も嫌だ。 が、怪物共とコアを全て駆逐するためには必要な力だとは思わんか? |
んなこと言われても……… |
とはいえ実用化の可能性が少ないのもまた事実だ。 やはり多少のデメリットには目を瞑ってでも爆弾を使う方がいいか。 |
……… |
そこでどうして私を見るわけ。 |
完成したら何個かくれ。 |
……余ったら売るのに吝かではないけど、そもそもあまり数がないわよ? |
あんたら何を企んでんのよ。 |
まったく……なんじゃこの有様は。 |
ぬ、戻ってきたか。 |
おぬしら人が留守にしている間に随分と危ないことばかりぬかしおってからに。 |
あたしは何も言ってないわよ! |
解散じゃ解散! 散れい散れい! |
今回はこれにて終了! |