夢ソフト

「よし、今日は魔女狩りといこうじゃないか」

「魔女狩りって、まさか……」

「柏木を落とす。これ以上好き勝手に引っ掻き回されるのも面倒だろ」

                               ――石動カズサと八重坂ミリア

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今回はヴァルキリーの弱点についての話だ。

………

どうした?

ここ最近あんたが出ずっぱりのような気がして、なんかこう珍しいなーと……

私は教育熱心だからな。

憤懣滾らせ爆発する可能性を秘めた将来有望な若人には支援の手を惜しまんよ。

神凪や春風は論外だ。

奴らには素質がない。

だからって私に目を付けないでよ!





では本題のヴァルキリーの弱点についてだが、結論を最初に言おう。

頭部だ。

頭部さえ完全破壊すればヴァルキリーは死亡する。

無論、他の部位が著しく損害を受ければ行動不能に追い込まれることもあるが時間と共に再生回復を見込める。

四肢が千切れ飛ぼうが、心臓を抉られようが、頸椎を折られようが、脳味噌さえ守り切れば死ぬことはない。

それはそれでショック死しそうなんだけどそのへんはどうなのよ……

その程度で死にはせん。

失神することはあるだろうがな。

実際に肉体が無惨な事になった場合は適当に耐えろ。

問題ないと念仏のように唱えていればどうにかなるだろうよ。

なんなのその根性論。

実際に平気なのだから落ち着いて事に当たれと言っているだけだ。

あっそ……

確かな知識があってこそ危急の事態に冷静な判断を下せるのだ。

重傷を負うや恐慌を来して失神するような間抜けに貴様はなりたいのか?

そりゃなりたくはないけど。

だが他に意識を保つ補助があるのならばそれに越したことはない。

幾つか手段がある。

どんなよ。

一つはサイバーウェアによる痛覚制御だ。

これは月影が用いているな。

但し痛覚制御も完全ではない。

正常な人間が使う限りは苦痛をほぼゼロに押さえ込めるが、ヴァルキリーの場合は効き具合に個人差がある。

そして痛みを抑え込めたとしても、自身の身体が引き裂かれた場合は精神的なショックにより失神する場合もある。

あたしも実際に自分の胴体が真っ二つにぶっちぎれたらどうなるかわかんないわ正直……

予め慣れておくという手もあるぞ?

勘弁して……

またデメリットとしてはヴァルキリーの力を削ぐ危険性がある。

これはサイバーウェア全般に言えることだがな。

ヴァルキリーが持つ未知の力と人体改造の親和性については未だに研究の余地を多く残している。

少なくとも全員を無条件に改造しようとは思わん程度にはな。

だったらどうして月影さんは色々埋め込んでるのよ。

カルディヤ連邦なりにメリットとデメリットを秤に掛けた結果だろうよ。

睡眠制御により最低限の休息で月影が前線に張り付くことができるというのは悪くない話だ。

埋め込む場合は成長期を終えている方が力を削がれる危険性が少ないという経験則もあるからな。

あとはヴァルキリーとなって数年が経過した者については大胆な施術が試みられることも多い。

どうせもうすぐ引退するなら少しでもデータの足しにしようというわけだ。

で、月影さんの場合は色々埋め込まれたものの大して劣化せず引退もせず現在に至る、と……

そういうことだな。

そしてサイバーウェア以外にはドラッグによる痛覚制御という手段もある。

こちらを主に用いているのが黒羽だな。

だが薬物の効果についてはこれもサイバーウェアと似たようなものだ。

研究途上であり、個人差もあり、確実な効果を期待できるものではない。

とはいえ深刻な能力低下を招きかねない手術を行うよりも気軽に使える手段ではある。

使用法についてはまちまちだが、体内やアンダーウェアにドラッグホルダを埋め込み何種類かを常時使用可能にしておくのが標準的だな。

使おうと思った矢先に胴体吹っ飛んだりしたら意味なくない?

まあな。その点は全身改造に劣る。

強みとしては何を打ち込むか選択の幅が広いことか。

痛覚制御は効かなくとも反射増強はよく効くようなケースもある。

となるとコンバットドラッグ漬けのヴァルキリーとかも……

居るに決まってるだろうが。

効果が安定しないというのは貴様等にとって不幸中の幸いだろうよ。

必ず劇的な効果を見込めるのならば常用させること間違い無しだ。

ヴァルキリーなんぞ二年か三年で使い潰すものだからな。

あんまり明るい話じゃないわねー

………

そういやあんたは脳ミソ以外は全部作り物なのよね。

ということは色々と機能満載なわけ?

ああ。

可能な限りの機能を詰め込んである。

有利な修正は限界まで重ねるのが当然だろう。

紙に書けば装備欄を使い尽くしてもなお足りず余白を埋め尽くす勢いだ。

私の身体に関しては一般的なヴァルキリーでは問題となるような能力低下の恐れが殆ど無いからな。

まるっきりインチキもいいところじゃないの。

一体どこでそんなボディを手に入れたのよ。

色々と幸運に恵まれて大きな拾い物をしてな。