『さて、お望み通りの一対一じゃ。遊んでやるぞ小娘?』 『その下らん慢心が命取りになることを、今から貴様に教えてやる!』 ――宝鏡メイと斑鳩セツナ --------------------------------------------- |
趣味…… |
そういえばそんなシリーズもありましたね。 すっかり忘れてましたよ。 |
じゃのう。 |
それで貴女は何か趣味を持っているんですか。 |
これ、というのはねえのう。 |
……自作の変なロボに乗ってヴァルフォースに出ておきながら無いでは通らないと思いますが。 |
まあの。 あれはあれで楽しいものよ。 |
そもそもどうしてそんなものを作ろうと思ったんですか。 タイプ違いの機体やらお蔵入りの物も含めれば相当な数がある筈ですよね。 |
面白半分、実益半分かのう…… |
半分とはいえメリットあるんですか。 |
わらわの玩具はヴァルキリーを製造する技術をベースに組み立てとるわけじゃからな。 調整すりゃ普通の小娘どもでも扱えるぞ。 |
何かの都合で機体を大量調達せにゃならん時に他人がホイホイ売ってくれるとは限らんからの。 供給が断たれてから慌てるくらいなら最初から備えをしとくに越したことねえわ。 |
道楽だけでやっているわけではない、と。 |
おうよ。 |
だったらもう少しまともな機体を作りましょうよ…… |
それに神凪さんから聞きましたけど場合によっては自分でやらなくていいようなところまでハンドメイドしてるそうじゃないですか。 |
そこは抑えがたい衝動というものがな…… |
…… |
まあ、ここは一つ昔話をしてやろう。 |
昔ってどれくらいですか。 |
わらわが子供だった頃じゃな。 |
それはまたなんともむかーしむかし、そのまたむかしの話ですね…… |
うむ。 |
当時のわらわは適当に調達した資材でつまらんもんを作るのが好きでな。 |
自分でつまらないとか言ってどうするんですか。 |
周りから見たらどうかという話よ。 十歳そこそこの小娘が作るものなんぞ大抵はつまらぬものじゃろ。 |
そりゃそうですけど。 ちなみにどんなものを作ったんです? |
そうさなあ…… 色々とこさえたが一番印象に残っているのは身代わり人形じゃの。 |
なんか禍々しそうなアイテムですねそれ。 |
うむ。 |
効果としてはそんなに珍しいもんではなくてな。 自分が傷付くと代わりに人形の方が傷付くというやつよ。 |
それだけ聞くと便利そうですが……やっぱりアレですか、人形の方が傷付くと自分の体が…… |
当然傷付くわけじゃよ。 |
それでも人形をどこかに隠しておけば充分使えるのでは。 |
まあ他にも弱点があってな。 実用品として使えるような代物ではなかったんじゃよ。 |
ともあれそんな人形をこさえたはいいが、残しておいて壊れでもしたら大惨事じゃし、作れたこと自体には満足しとったからさっさと廃棄しようと思ったんじゃが…… |
が? |
わらわと人形のリンクを強制的に解く手段が用意できなくてな。 人形を壊すにはわらわの身体を通してダメージを与えるしかなかったわけじゃ。 |
まさか…… |
んでなあ…… 人形は傷を肩代わりする効果を持ってはいたが、痛みまで引き受けることはできなくてのう…… |
つまり自分が死ぬような目に遭うことで人形を破壊した、と。 |
おうよ。爪先から頭のてっぺんまで満遍なくな。 部位ごとに耐久力設定がある構造じゃったからそれこそ全身くまなくボッコボコよ。 |
ありゃもうマジで死ぬかと思ったわ。 死なねえけどよ。 |
くだらないもん作るからそうなるんですよ。 |
うるせえわい! |
しかしよく自分を殺すような真似に踏み切ることができましたね。 そんな辛い目に遭うくらいなら人形を残しておいてもよかったのでは? |
それも考えたが材質の都合上、放って置いてもそのうち崩壊する可能性があったからの。 痛い目見ようがなんだろうがやるしかなかったんじゃよ。 |
まー、当時はそんな具合に暇がありゃ愉快な道具をこさえとったんじゃが、そのうちそうも行かなくなっての。 |
わらわんちの家業を継ぐはずだったクソ姉貴がとんずらこいたせいで、面倒事が全てわらわに降り掛かってきたんじゃよ。 |
遊んでいるような暇がなくなったと。 |
うむ。 そっから数年間のことは思い出そうとすると頭痛がするわ。 |
そして必死に面倒事を片付けている内に、ひょんなことからやたらと長生きする羽目になったわけじゃが…… |
ある時にふと思ったわけじゃ。 多少は弾けて面白おかしくやった方が長期的にはよろしいんじゃねえの、とな。 |
ワーカーホリックな人が灰色の人生を省みて行動をあらためるとかそういうノリですか? |
身も蓋もなく言うとそうなるわな。 |
で、その結果が童心に戻っての産廃製造と。 |
つーても同じことをしとると飽きるから適度に間隔を空けながらじゃがの。 |
普通の人が休日にガレージで変なものを作る程度ならともかく、歩く国家も同然の人がそれでうっかり事故か何かをやらかした時のことを考えるとげっそりしてきますが、口にするのも憚るような暗い趣味に打ち込まれるのよりはマシといえばマシなんですかねえ…… |
同類と比べりゃわらわはかなりの良識派じゃよ? |
はあ。 |