「さて、新人ながらすっかりヒールというか暴れ馬の印象が定着した美澤選手ですが……」 「前回の決め技も残虐なマッハストンピングでしたからね。仕方ないですね」 ――実況と解説 --------------------------------------------- |
続くんですか、心臓の話。 |
うむ。 |
ときに、おぬしの心臓は何か手を加えてあるのか? |
特にこれといっては…… 心臓そのものについては殆どまっさらですよ。 |
それは意外じゃな。 てっきり人工物に置換されていてもおかしくないと思っていたのじゃが。 |
そうなんですけどね。 えらいひとたちも流石に心臓を弄るのはリスキーだと思ったみたいです。 |
人の心は心臓にあり、という考え方もまだまだ根強いからの。 迂闊に手を入れておぬしが無力化するのを恐れたか。 |
ええ。 |
まあ、それはいいとして…… |
うぬ? |
どうして精神的な話から物理的な心臓の話に変わっているんですかね……? |
同じ話をするのも飽きるじゃん? |
適当ですねえ。 |
そういうわけじゃからおぬしの心臓がどうなっとるか話せ。 |
お断りだ。 |
なんじゃとこのケチんぼめ。 減るもんでもあるまいに。 |
知る人が多くなるほど価値が減る情報というものもあるわけですが…… |
ええい余計な茶々を入れるでないわ。 |
どうしても知りたいのならまずは先に貴様の心臓でも見せてみろ。 話はそれからだ。 |
わらわのか? ち、仕方がねえのー |
貴方なら勝手に中身を透かして見るくらいは朝飯前なんじゃないの? |
そうしたいのは山々だがな…… こいつの身体を普通に走査したところで何も情報を得られん。 まるで粘土人形か何かと見紛うくらいだぞ。 |
んなのお互い様じゃろ。 おぬしだって身体構造に隠蔽掛けているじゃろうが。 |
んで、ん、よっと。 ほれガード解いてやったぞ。 好きなだけ観察するがいい。 |
よし…… |
……… |
………? |
おい。 |
なんじゃよ。 |
心臓のようなものが複数あるばかりか、それぞれが定期的に位置を変えているわけだが…… |
んなことはないぞ。 全部ホンモノで、わらわとて心臓は一つしか持ってはおらん。 |
矛盾してませんかそれ。 |
つまり、いずれかを貫いた瞬間に偽物になる、と? |
そんなとこじゃな。 |
珍妙なボディしてますねえ…… |
……… |
もしや貴様、複数の身体を重ねているのか。 |
うむ、ばれたか。 |
深刻な損傷を受ければその身体を偽物ということにして別の身体にスイッチか……最悪だな。 |
じゃろ? |
ああ。 不意打ち一発で殺すのが難しい奴など大嫌いだ。 |
それもまた随分と横暴な言い草のような…… |