「弓が勇者を殺し、銃が騎士を駆逐し、機関銃が戦場の英雄を過去の物とした。 戦場に王者は不要よ。我々は退屈極まりない機体と戦術で、伝説を尽く葬るの」 ――水蓮アザミ --------------------------------------------- |
前回までのあらすじ! |
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何だったっけ? |
覚えてないのにどうしてそんなに自信満々に話を切り出すの…… |
あらすじの説明くらいきっちりこなしなさいよ。 |
誰だこんな能無しを野に放ったバカは。 |
みんな言いたい放題だねー |
あんたに言ってんのよあんたに! 他人事みたいにしてんじゃないわよ! |
じゃあ誰か代わりにあらすじを…… |
そもそも前回のあらすじなんぞ要るのか? いや、いらん。よって話を進める。 |
なんと強引な。 |
いやまあこの際無理矢理でも仕切っちゃうのが正しいと思うわよ…… |
それで宝鏡のメモについてだが…… |
内容はヴァルキリーの能力変動についてだ。 |
そこまでは神凪さんに聞いたわね。 |
ヴァルキリーの力は機体と装備している者の能力だけで全てが決まるわけではなく、その他の要因によっても変動する。 |
その代表例の一つが、名声による能力の嵩上げだ。 |
なんか隣のコーナーでそんな話があったような…… |
つまり神凪のように最強と称されるようなヴァルキリーは、そうであるというだけで強い。 |
いや、それはおかしいでしょ…… |
ん? |
いくらなんでもそれはオカルトに過ぎるわよ。 |
人にもよるでしょうけど、ビッグネームと戦う時は緊張したり萎縮したりで、思うように動けないってことはありえるでしょ。 |
それで実力を発揮できなくて負けちゃって、強い方がより強く見えるとか、そういうことじゃないの? |
尤もな疑問だな。 |
だが、その点について宝鏡らは確信を得ている。 |
このメモ書きを読む限りでは、そもそも宝鏡らはそのような現象が存在するという知識を持っており、かつ類似世界を用いたシミュレーションにより同一人物が名声を得ている場合と全く無名の場合のスペックを比較検証したようだ。 |
はあ? |
まあ、これについては私にとっても既知の話だ。 今更驚くようなことでもない。 |
元から知っている話だから、斑鳩さんはメモ書きを読んでもそんなに影響を受けなかった……? |
それはあるだろうな。 |
他の変動要素としては"二度あることは三度ある"といったように特定の状況下で結果が偏る場合がある、か。 |
つまり大舞台で負けるようなジンクスを持つ奴は、大舞台に臨む際に能力が低下することで更に負ける確率が高まる。 |
たとえ本人がどれだけ鋼のメンタルを持っていようがおかまいなしだ。 余人が"あいつは大舞台に弱い"と思うことで本当に足を引っ張られることになるわけだな。 |
なんつー迷惑な…… |
逆に言えば伝説を作ることで有利にもなる。 |
軌道の法廷が宝鏡の肝煎りでオービタル・クインテット……その時々で人数と名称は変わるが、最精鋭の部隊を作ったこともこの現象と無関係ではなかろうよ。 |
曰く付きであればあるほど強い……? |
ああ。 |
例えば今年だと名を挙げたことによる恩恵が最も大きかったのは西部戦線の白き魔女、もとい死神だろう。 |
……クルルちゃん? |
漏れ伝え聞く限りでも撃墜数が凄まじい。 ヴァルフォースの試合に出てきた場合はシングルランカー間違い無しだ。 |
まー、そういう現象があるというのはいいとして……実際に、それって、どれくらいの影響があるわけ? |
伝説によって能力が増減するとしても、それがせいぜい一パーセントの範囲とかじゃ大した事ないでしょ。 |
短距離走で一パーセントの違いが出たらかなりの差だとは思うけど…… |
いい質問だな。 その通りだ。 |
大した違いが無いのであれば伝説など気にするだけ労力の無駄だ。 |
宝鏡が気にしたのも"伝説は実際にどの程度の影響力を持ち得るか?"という点だ。 故に奴は他の永世者と協力することでその最大値を計測した。 |
その結果は……? |
く、く、く、素晴らしいぞ? |
その他にも条件は様々あるが、全人類と、この星が、一つの結果を求めて伝説を信じ、期待を賭けたとするならば、最強たる第六世界とて撃滅可能だ。 |
修正の最大値は倍率にして五十倍というところだな。 つまり勝機が一パーセントでもあるならば、理論上最大の修正が掛かることにより五分五分の勝負には持ち込めるということだ。 |
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あのさあ…… |
ぬ? |
つまりそのメモって、宝鏡さんが、六堂さんをどうすればボコボコにできるかの計算をしたメモってこと……? |
だろうな。 |
それじゃスケール大きすぎてあたしらには何も意味ないでしょ! |
確かにそうだが…… 上手く利用すれば最大で五十倍も自分の勝率を底上げできるという事実は重要だぞ? 何でも可能だという気すらしてくるな。 |
確かに…… |
あたしは自分が生き残ることができればそれで充分なんですけど? |
なあに、貴様もそのうち理不尽な事に我慢できなくなってふざけた連中を皆殺しにしたいと思うはずだ。 |
誰が思うか! |