夢ソフト

「……ちゃんと動けばなんでもいい」

                              ――神凪アイ、後継機への要望を問われ

さて今回は……

お話の前にちょっといいですか。

なんじゃい。

どうしてまた私が駆り出されるんですか。

どうしてと言われてもなぁ……

貴女も貴女で何回この場に出てくれば気が済むんですか。

少しは他の子達に喋らせるべきですよ。

わらわとおぬしの組み合わせは相性が良いからな。

確かに話を進めるには悪くない組み合わせだと私も思いますけど……物には限度というものが。

そんな物わかりの良い限度など知らんな。

ほれ、さっさと始めるぞ。

はあ。




それで今回のお題は。

神凪機の話でもするか。

ああ……

あの無難で、隙が無くて、安定性抜群で、充分な火力と防御力と機動力を備えた機体ですね。

うむ……

一行で説明が済んでしまったのう。

まあ事実ですし。

本当に使いやすいですよあの機体は。

多少小回りが効かないことを除けば不満らしい不満がないです。

ぬ、おぬしはあの機体を使ったことがあるのか?

私はアグレッサーも務めてますから……

成る程な。

自分では結構上手く使えているつもりです。

おそらく一対一なら普段よりも強いかと。

器用なやつじゃな……

それで試合に出るわけにはいきませんけどね。

ウチの国の機体よりも性能がいいと認めることになってしまいますし。

おぬしんとこの機体が時代遅れのポンコツだらけだとは誰だって知っておるが、自分で言ってしまったらおしまいだわな。

おしまいですね。

で、話を神凪さんの機体に戻しますが……他に何か特徴はありますかね。

あんまりないのう……

安定した技術ばかりが投入されておるからな。

強いて挙げれば出力周りで多少冒険をしていることか。

ん、ちょっと待て。

出力周りといえば単発機と双発機の違いについてこれまで説明したことはあったか?

ないはずですが。

しまったのう。

順番を間違えたか。

今ついでに説明してしまえばどうです。

泥縄もいいところじゃがそうするか……

とりあえず機体にはコアを一つだけ搭載したものと、二つ以上搭載したものが存在する。

コアが一つなら単発機、二つなら双発機、三つなら三発機、四つなら四発機と呼ばれるわけじゃ。

このあたりは航空機と同じよ。

ヴァルキリーだと三発機以上は滅多に見掛けませんけどね。

コアが増えれば増えるほど開発の難易度も上がるからの。

双発機の技術が確立されたのは第二世代中期型の頃かの。

つまり神凪機が開発される頃には双発機も充分信頼できる技術になっていた、と。

うむ。

では神凪機がどこで冒険をしたのかといえば、当時としては制御可能な限界スレスレのコアを搭載したことよ。

普通は限界スレスレを狙うと安定させられずに失敗するんですけどね。

故に神凪機の開発陣は、出力周り以外は無難な技術で固めることを選んだわけじゃ。

そうすれば大出力の双発機を安定させるという問題に注力できるからの。

ああ、今更じゃが神凪機は双発機じゃからな。

武装に関しても当面は他の機体の物をそのまま流用するという有様じゃった。

最初は短機関銃とハンドミサイル持たされてたんでしたっけ?

うむ。実に格好悪かったぞ。

適当に何か持たせておけという投げやりな雰囲気が全身から滲み出ていたからな。

しかし一度目の改修時に神凪機の専用武器としてあの槍が与えられ、今の姿となったわけじゃ。

アレはいい武器ですよね。

近接戦闘から遠距離の射撃戦まであの武器一つで全てこなせますし。

初期ロットは欠陥品だったがの。

射撃時に開口する機構が上手く働かずに暴発という恐ろしい事故を起こしているからな。

よくあることかと。

うむ……よくあることじゃな。

わらわも何度痛い目に遭ったことか……

戻って来たドリルハンドが貴女の顔に突っ込んで行ったのは素晴らしいコントでした。

あれは超痛かったな。

プラズマの射出口が潰れてるのに無理矢理撃って自爆したこともありましたよね。

それも超痛かったな。

爆弾を投げようとしたところで全部誘爆した時はどうでしたか?

その程度で死ぬものではないが、死ぬかと思ったな。

……もうちょっと安全な機体を作ったらどうなんです。

そんなの面白くもなんともないではないか。

てか話が脱線しすぎじゃろ。

いい加減神凪機についてはまとめに入るぞ。

そうしますか。

まー、神凪機が成功した最大の理由はとにかく安定した大出力を確保できたからよ。

その出力をバランス良く振り分けることで同時期の機体と比べて頭一つ抜き出た総合力を持つに至ったわけじゃ。

最近は苦しいようですが。

第三世代機と比べてしまうと逆に頭一つへこんでるのが辛いところじゃな。

後継機の開発はどうなっているんですか。

さあのー

プロジェクトが迷走しているとは聞いとるが詳しいことは知らんのう。