「黒羽ナガレです。その………よろしくお願いします」 ――黒羽ナガレ、スタッフとの顔会わせにて |
面子が同じで何が悪い! |
別にいいですよ。 もう諦めましたから。 |
うむ…… おぬしは話のわかるやつよ。 |
ですので遠慮無く寝言を吐いてくだい。 |
そうする。 |
そもそも今回は何の話をするんですか。 |
ヴァルキリーになってしまったせいで小娘どもがどう変わったか、という話でもしようかと思っておるのじゃが。 |
それは環境とか生活についてですか。 それとも精神的な方ですか。 |
後者じゃな。 |
なるほど。 ありといえばありでしょう。 しかし、それは…… |
わかっておる。 連中は案外変化が少ないんじゃよな。 とりあえず一人ずつ見て行こうではないか。 |
まあ構いませんが。 |
まずは神凪よ。 |
あの子、いつからあんな性格をしてるんですか? |
最初からじゃよ。 わらわが拾って来た頃からずっとあの調子じゃな。 |
早くも寝言ですね。 拾って来たってなんですか。 |
ちょいと内戦後の焼け野原からな。 |
それって神凪さんが何歳くらいの時ですか。 |
おそらく八歳前後の頃か? その年齢で適性が発現しているのは珍しくての。 つい手が伸びてもうた。 |
では、それからしばらくは貴方が預かっていたと? |
いいや、すぐに手放しておるよ。 将来のエース候補を欲しがっていた奴にくれてやったわ。 対価として受け取ったのがあのポンコツ空母よ。 |
……どこから突っ込めばいいのか。 |
流しておけい。 |
では流しましょう。 |
さっきも言ったが神凪はわらわが見出した頃からあの性格でな。 そしてヴァルキリーになったからといって何も変わりはせんかった。 神凪ほど上手く育成されたヴァルキリーは他におらんよ。 |
つまり最初から兵器として望ましい性格をしていたので、それを全力で維持された、と…… |
子供の頃から適性が発現しており、しかも訓練で伸びるタイプじゃ。 これはもうトップエースになること間違いなしよ。 扱いづらい性格に育って台無しにするにはあまりに勿体ないからな。 |
はあ。 |
そういやおぬしも多分大して変わっとらんじゃろ? |
変わってないですね。 自分の進路を決めた時から戦うことについての心構えは準備していましたし。 |
つまらん奴じゃな。 |
何とでも言ってください。 |
おそらく斑鳩も大して変わっとらんじゃろうな…… あやつが元々は可愛い性格の娘だとかありえねえわ。 |
ないですね。 元から野蛮な組織の野蛮な部署で野蛮なことをしていた類かと。 ヴァルキリーになって戦争したからって何かが変わるような性格だったとは思えません。 |
そして残りの連中じゃが…… 六堂も変わっとらんじゃろうな。 あやつには一般常識や倫理観が搭載されてねえからの。 |
美澤と春風は一度痛い目に遭えば変わるかもしれん。 あいつらは温室育ちじゃからな。 なかなか楽しみではある。 |
とはいえ最初に言った通り、現時点ではどいつもこいつも変化が少ないわけじゃ。 |
しかし、一人だけ劇的に変わってしまった奴がおる。 |
黒羽さんですか。 |
あやつはやばい。 年々どうしようもなくなってきておる。 |
彼女は確か一般人上がりですよね? |
うむ、元々は普通の女学生よ。 ヴァルキリーになる前のあやつに一度だけ会ったことがある。 実に大人しい娘という印象じゃったな。 |
少なくともわらわをクズだのアホだのババァだの罵る娘には見えんかったぞ! |
ところが今やアレモンじゃろ? 以前の面影なんぞ全然残っておらんわ。 |
黒羽さんに関しては性格が変わったというより頭がぶっ飛んでいるだけという気もしますが…… |
まあな。 久しぶりに会ってみればわらわのことを覚えとらんかったからの。 兄がお世話になっております、などと真っ当な挨拶をする娘は死んでもうたのじゃよ。 |
はあ。 |