「私達の力に対してこの星はあまりにも狭すぎる。 ……と、偉い人が言っておりました」 ――六堂マリア、何気無く |
今回も引き続き黒羽についてな。 |
あたしも引き続き駆り出されるわけね…… |
とりあえず黒羽機のいいところ探しでもするか。 |
無理に探さなくても…… |
とりあえずコアの出力は半端ないわ。 今時の第三世代機すら足元にも寄せ付けぬスペックじゃよ。 |
わー、すごい。 |
じゃが、いかんせん使い手に掛かる負担も半端ではない。 全力運転すると血を吐いて死ぬこと請け合いじゃ。 |
むしろ全力どころか半力でも死にかねん。 注意して四分の一で運用しても突発的な負荷によりやはり死にかねん。 |
……… |
使い手だけではなく機体のフレームも保たん。 全力運転するとパーツがガタガタし始めていずれは分解する。 むしろ全力どころか半力でもバラバラになりかねん。 |
……… |
そして溢れるパワーを上手く活用できる武装にも欠けておる。 火薬だけ大量に持っているようなもんじゃよ。 自爆させた場合は最も大規模な破壊を巻き起こせるがな。 |
どこがいいところ探しよ! |
まあ待て。 落ち着くのじゃ。 |
確かに黒羽機は欠点ばかりよ。 しかし、それは改良の余地に溢れているということではないか。 まだまだ伸びしろがあるわけじゃ。 |
物は言い様ね…… |
ヴァルキリーの心臓部たるコアの性能がずば抜けて高いというのは凄まじいメリットではないか。 その馬鹿馬鹿しい大出力を余すことなく活かしきるフレームと武装と使い手さえ用意できればまさに無敵よ。 |
確かにそうかもしれないけど…… そんなに上手くいくもんでもないでしょ。 |
うむ…… そんなに上手くいくわけないわな。 |
フレームと武装はともかく使い手への負担を抑えるのは難しいからのう…… 他には生産コストの問題も解決せんことにはな…… |
まあ機体についてはだいたいわかったわよ。 で、黒羽さん自体の能力はどうなのよ。 |
極めて優秀じゃよ? ピーキーなのは機体だけで、ヴァルキリーとしての素養と実績はすこぶる安定しとるからの。 今のところは判断力も充分に維持されとるみたいじゃしな。 |
少なくともおぬしや春風のようなルーキーとは比べものにならんよ。 あとは月影ほどではないが、対応が難しい現場での判断もそれなりに任せることができるしの。 |
ふーん…… |
ところで黒羽さんって何か特殊な能力は持ってるわけ? |
持っとるよ。 あやつの異能は耐久性じゃな。 |
え? あんなに打たれ弱いのに? |
打たれ弱いのは機体であって黒羽ではねえからのう…… それもこれもコアのパワーを上手く防御結界に回すことができんのが原因なわけじゃが。 |
黒羽が持つ耐久性とは、高出力の機体を扱っても常人より遙かに耐えることができるという能力よ。 故に黒羽は不安定な六発機という危険な機体を扱い続けることができるわけじゃ。 |
仮におぬしが黒羽機を用いた場合、突発的な過負荷を受けた際に倒れるか最悪の場合は死ぬぞ。 |
根性で耐えるとか無理? |
無理じゃな。 常人では越えられぬ壁を越えられるからこそ異能は異能と呼ばれるわけじゃ。 |
ついでに言えば黒羽は短時間であれば六堂の機体を扱えるかもしれん。 精神汚染耐性が無い限りは頭の方が先にぶっ壊れる気もするが。 |
なるほどねー…… |
で、他には何かあるの? |
あとは鷹の目を持っておるな。 |
ホークアイ? でもヴァルキリーはみんな視覚強化されてるじゃない。 私だってかなり遠くまではっきり見ることができるわよ。 |
その見え具合のレベルが全然違うのじゃよ。 黒羽の場合は視線が遮るものが無ければどこまでも見通すぞ。 |
どこまでも、って…… じゃあ高い所に上がれば隣の大陸の細かいところまで見えちゃったりするわけ? |
そうじゃよ。 |
空を見上げれば宇宙の果てまで見えるの? |
それは無理じゃな。 以前に月影がおぬしに話していたはずじゃが、ヴァルキリーの力はこの大地から離れるにつれて弱まって行く。 |
そして力が完全に消え去ってしまう限界点が低軌道のあたりでな。 つまり鷹の目の効果が及ぶのもそこまでじゃ。 |
それなりに制限はあるってことね…… じゃあ大気の汚れとか気温差で光が屈折した場合の影響とかは? |
それもある程度までは無視できる。 黒羽の鷹の目はかなり強力じゃよ。 霧や雲を抜けた先、あるいは海の底まで視線を通すからな。 |
どういう仕組みなんだか…… |