「慣れてるとは言ったけど……傷付かないとは言ってない」 神凪アイ、一人言 |
酷かったわね、前回。 |
酷かったな。 |
こちらは淡々と進めるわよ。 |
それでいい。 |
今回は神凪について。 |
私が説明をするのか。 |
ええ。 |
まず最初に大雑把な質問だけど…… 彼女はどのようなヴァルキリーなのよ。 |
強い。 |
具体的には? |
実戦で撃墜したヴァルキリーは公的に確認されている範囲でも三十人以上。 ヴァルフォースにおいても勝率は9割を超えている。 記録だけでも充分な怪物ぶりだ。 |
貴女の戦果もそれに匹敵するんじゃないの。 |
数だけならばそうだな。 しかし私は相手や状況を選んで戦っているだけだ。 |
神凪は過酷な戦いを強いられていたと? |
殺し合いにおける私のスコアは大半が不意打ちか一対一の戦いで稼いだものだ。 ところが神凪は一体多の戦いで相手を皆殺しにするような真似もやってのけた。 この点が私とは大きく異なる。 |
神凪の経歴については何か知ってる? |
人種や年齢、言語、発音の癖などからとある連邦王国出身、同解体戦争時の戦災孤児であるとの噂は根強いが確たる証拠は存在しない。 |
実際にその通りなんじゃないの? 神凪を焼け野原から拾ってきた、と宝鏡が以前言ってたわよ。 |
奴は平気で嘘を吐く。 |
一刀両断したわね。 |
何せ軌道の法廷に引き渡された時点の神凪は言葉と記憶の双方を失っていたと聞いているからな。 |
へえ…… |
いずれにせよ神凪は近年で最も上手く育てられた最強のヴァルキリーだ。 過酷な訓練、任務にも文句一つ言わず、己の信じる正義の為ならば眉一つ動かさずに殺戮も行う都合のいい道具だよ。 |
随分な言い様じゃない。 |
それが客観的な事実だからな。 |
もしかしたら奴にも人間味というものが存在するのかもしれんが…… 少なくとも私がそれを目にしたことはない。 |
最近は神凪もファンキーな言動を繰り返しているみたいだけど? |
ここでのやり取りなど一時の夢だからな。 |
まあ……そうね。 |