「世界を変えるの。私達が、私達の為に」 ―― 七姉妹の一人、仲間達に向かって |
今日のお題は過去に存在したヴァルキリー達についてよ。 |
昔話でもするの? |
ええ。 |
さて、春風さんはこの世で最も有名なヴァルキリーが誰だか知ってるかしら? |
最も有名なヴァルキリー? 誰だろ…… |
えーと、宝鏡さん? |
確かにあの人は有名だけど、ヴァルキリーである前に永世者だから別のカテゴリーに分類するべきね。 |
じゃあ神凪さんかなあ…… |
現役の、という条件が付くなら神凪さんでしょうけど……不正解よ。 |
うーん、わかんない! |
諦めが早いわよ。 |
知らないことはわからないもーん。 |
ま、それもそうね。 |
正解はアウトランドの七姉妹、セブン・シスターズと呼ばれた七人のヴァルキリー達よ。 |
あー、名前くらいは聞いたことある、かも…… |
今時の子達じゃ詳しく知らなくても無理はないわね。 何せようやく第一世代機が生産され始めた頃の話だもの。 |
そんなに昔の人達なのに有名なんだ。 |
黎明期の頃に良くも悪くも一番目立っていたのよ。 メディアへの露出も激しかったし今も記憶に残している大人達は多いわ。 |
その七姉妹ってどんな人達だったの? |
ヴァルキリーになる前の職業は学生が三人、医療従事者が一人、軍人が一人、スポーツ選手が一人、無職が一人。 年齢は十四歳から二十一歳まで。活動期間は二年弱。 そして全員が現物持ちよ。 |
現物って……オリジナルのことだっけ? |
そうよ。 内訳は確か……槍と剣と鉤爪と斧と弓と小銃と杖だったかしら。 |
なんかバランスいいね…… |
実際に良かったのよ。 集団戦闘では当時無類の強さを誇ってたもの。 周辺の国や企業による急ごしらえの部隊なんか相手にならなかったそうよ。 |
特に重要だったのは杖を持っていた女の子ね。 その杖は今で言うところの特殊機と同様の機能を有していたの。 他のヴァルキリーの再生能力を強化したり、他者の侵入を阻む広大な結界の敷設とか。 |
どうしてその七姉妹がそこまで有名になったのさ。 |
彼女達が大国の膝下に組み敷かれていた一つの名ばかり自治州に集って独立戦争を試みたからよ。 |
むずかしいことはわかんなーい。 |
まだ難しくもなんともないでしょ…… |
当時は小規模なものから大規模なものまで様々な衝突が繰り返されていたわ。 だから独立紛争というだけならそう珍しくはないんだけど…… |
アウトランドの紛争は素質者の女の子達の自由を求める戦いという側面も持っていたのよ。 今は多少マシだけど当時の素質者の扱いは程度の差こそあれ結構酷かったし。 |
で、蜂起の経緯について簡単に説明するとねー…… 中央政府から派遣されていた治安当局者が現地住民に過度の暴行を加えたことを切っ掛けに暴動が起きたのよ。 そうなれば当然、中央政府は暴動を鎮圧しようとするんだけど…… |
わかんなーいわかーんなーい。 |
七姉妹のうち三人は自治州の出身者でね、どこで手に入れたとも知れない現物を持ち出して、鎮圧に乗り出してきた連中を追い払ったのよ。 そして勢いに任せて、州議会やら関係者を巻き込みながら独立戦争を始めちゃったわけ。 |
その際に中央や諸外国に向けて様々な宣言を行ったんだけど、代表者として壇上に立ったのは後に七姉妹を率いた一人の女の子。 |
彼女は独立に関する通り一遍の宣言を済ませてから、ヴァルキリーの女の子達に対する無体な行為百般の禁止を訴え、趣旨に賛同する娘は自分の元に集えと呼び掛けたのよ。 |
それから間もなく四人のヴァルキリーが元の所属を脱走したり亡命したりで面子に加わり、合計七人に増えた彼女達はセブン・シスターズと呼ばれるようになったわけ。 |
彼女達の戦争と、それがどのような結末を迎えたかは…… |
Zzz…… |
…次回に持ち越しということで。 |