「また偉い人達との食事ですか? 今月、もう五回目なんですけど」 ――月影アヤカ、うんざりした顔で |
前回からの続きよ。 |
はーい。 |
まずは六堂さんからね。 |
……とはいっても六堂さんの私生活はあまりにも秘密のベールに覆われすぎているので、今回は宝鏡さんからメモを貰ってきました。 |
ふむふむ。 |
『六堂はおそらく食事とかしとらん』ですって。 |
えー? ごはん食べないの? |
食べないんでしょ。 しなくても大丈夫なんじゃないの。 どういう理屈かはわからないけど。 |
ほへー |
あとは斑鳩さんも食事する必要はないみたいよ。 |
全身義体だもんねー |
ただし斑鳩さんは生体機能もかなり再現されているらしいから食事自体は可能と聞いたわ。 |
味はわかるのかな? |
コストけちってる体だとは思えないし、そのあたりも問題無いでしょうね。 |
で、次は宝鏡さん。 |
宝鏡さんも生命維持のための食事は必要ないんですって。 |
さっきからごはん食べなくていい人ばっかりだね。 |
だけど食事でもエネルギー摂取が可能だから気分次第で食事をするんだけど…… その食事ってのがかなり変わっててね。 |
ゲテモノ食いなの? |
それほど間違ってはいないわね。 私達から見ればの話だけど。 |
というのも宝鏡さんはあらゆる食材を未調理のまま食べるそうよ。 皮を剥がずに肉をそのまま、海産物は骨ごと甲羅ごと、植物も種や皮ごとおかまいなし。 基本的に何でも噛み砕いたり丸呑みにできるみたいね。 |
えええ。 |
しかも自分の体重を遙かに超える量を食べるとか。 |
宝鏡さんって怪物なの? |
現代の人間とは根本的に異なる生物であることは間違いないわね。 |
私達は食材を調理することによって食べられる形にしたり栄養を効率良く吸収するけれど、宝鏡さんの場合は一切手を加えず食べるのがベストらしいのよ。 そして生命や存在そのものを喰らうという性質上、一つの個体はその大半を食べなければ意味がないそうよ。 |
なんのことだかよくわからないんだけど。 |
安心しなさい。 私もよくわからないし。 |
ま、宝鏡さんにとって真の意味での食事はそういう壮絶なものらしいから、現場を見たことがある人はほとんどいないみたいね。 |
ボクもあんまり見たくないなー |
そして最後は黒羽さんよ。 |
黒羽さんは無味乾燥な食事をしてるわね。 錠剤とかゼリー状の栄養剤とかで済ませてるようだし。 今時はそれでも充分といえば充分だけど。 |
多分、食事のために腰を落ち着けることが無いんじゃないかしら。 春風さん以上のスピード派ね。 |
あんまり楽しそうじゃないね。 |
だけど舌が一番冴えているのは間違いなく黒羽さんよ。 ヴァルキリーになる前は相当いい食事をしてたみたいだから。 |
シェフをよべ! とか言ったりしてたのかな? |
言うわけないでしょ。 |
じゃあ…… |
女将も呼ばないわよ。 |
ぶーぶー |
なにがぶーぶーよ。 |