「こんなところで寝てると……風邪ひく」 ――神凪アイ、倒れている同僚を引きずり |
はいはい今回も元気よく始めるわよー |
だるいから帰っていい? |
ダメよ。 |
それで今回は何よ…… |
貴方達の生活についてよ。 |
今までよりも細かいところまで説明するってわけ? |
そういうことね。 まずは神凪さんからよ。 |
神凪さんの生活なんて誰が把握してるのよ。 あんただって詳しくは知らないんじゃない? |
ええ、知るわけないでしょ。 だから宝鏡さんからまたメモを貰ってきたわ。 ノープロブレム、オールグリーンよ。 |
あっそ…… |
じゃあ説明していくわ。 |
まー、あの無表情なコンバットマシーンがどんな生活をしているのかは少し興味があるわね。 |
神凪さんが暮らしているのは軌道の法廷が用意した官舎よ。 キャパ三十人くらいの建物らしいけど、実際に住んでいるのは神凪さん含めて五人程度みたいね。 |
平均的なスケジュールについてだけど、早朝の起床後に簡単なメディカルチェックと身繕い。 それからだだっ広い食堂で朝食。 |
この食事時の光景ってのがなかなかの絵面よ。 |
そういえば胃袋の話の時に神凪さんの同僚について少し触れてたわね…… |
そうそう。 神凪さんは無言で黙々と食事をし、眠ったままの娘も同様で、精神的にアレな娘はコップの水を机の上にぶちまけて指で邪悪な水絵を描いているという心温まる風景よ。 他の娘はそもそも部屋から出てこないとか食堂行くまでに力尽きて廊下で倒れたり。 |
もちろんお互いがお互いの存在なんか無いものと思っているのか離れた席に座って言葉を交わすこともないわ。 ちなみに服装はみんな薄色の患者衣ですって。 |
一体全体どこの病院よ! |
病院みたいなもんでしょ。 あと、その建物だけど彼女達以外に人間がいないそうよ。 |
基本的な部分については多数のドロイドでオートメーション化されているわ。 やっぱりお金かけてるわねー |
そして食事が終わった後は一旦部屋に戻ってから制服に着替えね。 |
制服? |
あの子、正式な身分としては国家企業法廷執行局の軍人もどきだもの。 外出の際は局の制服を着用することが求められるわ。 |
ただし神凪さんは二種類の制服を持ってるから、どちらを使うかはその日のスケジュール次第だそうよ。 ま、普段は局の制服を着ることのほうが圧倒的に多いみたいだけど。 |
もう一つの制服というと……水着? |
んなわけないでしょ。 |
あ、あー、もしかして……学校の制服? |
そうよ。 神凪さんはとある国際大付属校の生徒としての身分も持っているわ。 |
あの子が学校に通ってるとか意外ね…… |
通ってるわけないじゃない。 その学校には校舎というものがないから。 物理的にもウェブマトリックスにもね。 |
ついでに言えば教育カリキュラムもなければ教員もいないわ。 あるのは選択可能な複数の制服と、何もしなくても貰える卒業資格だけよ。 |
なにそのペーパー学校。 |
だから神凪さんみたいな学業どころじゃない子達への救済措置の一種よ。 そこの卒業資格があればより高等な教育機関の受験資格を得られるってわけ。 通用するのはヴァルフォースに参加している国家や企業の範囲内に限られるけどね。 |
で、話を元に戻すと神凪さんは子供としての見た目が求められる時は学校の制服を着用するのよ。 けど先述の通り普段は執行局の制服ばかりね。 |
……とりあえず長くなってきたからここでひとまず中断かしらね。 |
神凪さんの生活について、起きて朝食摂って着替えたところまでしかまだ説明してないんだけど。 |
だから続きは次回で。 |
続くの? |
一応。 |