「飛行機こわい。何度乗っても慣れない……」 ――神凪アイ、移動中に |
前回からの続きよ。 |
内容は神凪さんの一日についてよね…… |
そうよー 神凪さんが着替えたところから。 |
で、支度が済んだら官舎のロビーで待機。 その後は迎えに来た担当スタッフ達と一緒に車両で執行局のベースまで移動。 |
ねー |
何? |
神凪さんって一応地上に住んでいるのよね? |
そうよ。 国家企業法廷の本部は通称通り宇宙にあるけれど、執行局の活動は地表上で行われるものが大半だもの。 主戦力の子は大半が地上に配置されている筈よ。 |
ふーん…… |
そしてベースに着いたら一日のスケジュールを再確認し、予定されている試合についてのミーティングが行われるわ。 といっても神凪さんの場合は試合に関する打ち合わせなんて一瞬で終わるみたいだけど。 |
それでも勝てるってんだから腹が立つわね。 |
ミーティングが終了したら試合が行われる場所までまた移動。 SSTOで遠くの大陸まで飛んで現地入り。 |
そこからまたヘリなり車両なりで試合場まで移動しつつ昼食。 なんだかさっきから移動って言葉ばかりだけど。 |
え? |
試合場に着いたらそのまま開始時間まで待機。 |
いやいやいや、なにそれ? |
何それって言われても…… どこかおかしいところでもあった? |
現地入りしてすぐに試合するわけ? 翌日とかじゃなくて? |
あったりまえでしょ。 私だって大抵はそうよ。 |
人手不足なところは悲惨よー? 滅茶苦茶な過密日程組まれるもの。 貴女のところはそれなりに負荷が分散してるからまだマシよ。 |
よく気力が保つわね。 |
良くも悪くも慣れちゃうものよ。 |
それで試合時間が来たら、まあ試合をするんだけど…… |
どうせ秒殺するんでしょ。 |
ええ。 牽制射撃をしたかと思ったら瞬時に突っ込んで至近距離まで肉薄。 槍を横薙ぎにフルスイングして対戦相手の側頭部を強打。 対戦相手は風車のように回転しながら吹っ飛んでいき、障害物に叩き付けられて気絶。 |
……… |
動かなくなったところへチャージショットを連射。 五発くらい叩き込んだところでストップが掛かり試合終了。 |
まあそんな感じになるわよね…… |
そして試合が終了したら撤収よ。 行きと同じルートでベースへと帰還。 この時点で大体日没頃ね。 |
で、食事を済ませて多少休憩を挟んでから夜間の訓練開始よ。 |
そういえば神凪さんはトレーニングで強くなるタイプだっけ…… |
訓練型の子はひたすら模擬戦闘をさせられることが多いわね。 神凪さんもその例に漏れないみたいよ。 |
ヴァルキリーとしての寿命が縮まない程度に出力を抑えながら延々撃ち合い殴り合い。 きつければきついほど良い、というのが通説だからやらされる方は地獄よこれ。 骨が折れたり呼吸が止まるような苦痛を何度も繰り返せということだもの。 |
いくら怪我が瞬時に治るといってもねー…… |
毎日そんなことをしろとか正気の沙汰じゃないわよ。 訓練型の子が苦痛に耐えきれず潰れたケースは珍しくないもの。 |
だったら痛覚制御用サイバーウェア入れればいいんじゃないの? |
それをやると訓練の効果が著しく減少するのよね…… 後天的な無痛症になった子も同様よ。 |
何か抜け道はないわけ? |
今の所はないわね。 |
ともあれ夜中までそういう悲惨なトレーニングを続けて、終わったら官舎に戻って寝支度して就寝。 以上が神凪さんの適当な一日の流れよ。 |
なんというか…… どこにも娯楽とか潤いというものが無かったわね。 |
あの子にそんなものはないわよ。 |
休日とかはどうなのよ。 |
あの子に休日なんてものはないわよ。 昔はあったみたいだけど。 |
なんで過去形なのよ。 |
今はないからよ。 正義の味方は大変ね。 |
あっそ…… |