「旅客機自体は墜とした。これから生死を確認しに……ああ、駄目だな。生きている。 落下中の破片の中に姿を確認した。向こうもこちらに気付いたようだ。忙しくなる。通信、切るぞ」 ――斑鳩セツナ、遙か彼方から宝鏡メイを襲い |
前回は斑鳩さんに解説してもらったんですって? |
そうよ。 宝鏡さんについて。 |
じゃあ今回も引き続き宝鏡さんの話にしましょうか。 |
まだ話すことが何かあるわけ? |
あるわよ。 斑鳩さんが説明したのは宝鏡さんのスペックに関してでしょ。 実際に何をしているのかはあまり話してないじゃない。 |
まあ…… そう言われてみればそうね。 でも宝鏡さんが何をしているかだなんて把握できてるの? |
ああ、それは大丈夫。 先日の神凪さんの情報と一緒にメモを貰ってあるから。 全く問題はないわ。 |
最早メモさえあれば誰が何を話してもおかしくない雰囲気になってきたわね…… |
でもねー 宝鏡さんは生活リズムってものがないから典型的な一日の切り取り方が難しいのよねー |
なんで無いわけ。 |
だって宝鏡さんは食事と睡眠が不要だもの。 |
あっそ…… |
そういや宝鏡さんってどこに住んでるのよ。 |
普段からあちこち飛び回っているから特に決まった居住地というのはないわ。 保有するドメインは定期的に巡回してるって話だけど。 |
ドメイン? |
永世者の縄張りのことよ。 大抵の永世者は自分のドメインに引きこもって滅多に出てこないそうよ。 |
なんで引きこもるのよ。 |
出歩くよりもその方が安全だから。 いくら永世者といっても今時のヴァルキリーと戦ったら普通に死にかねないもの。 大人だって子供に刃物で刺されたら死ぬでしょ。 |
永世者の中にはヴァルキリー対策として自分のドメイン一帯を低活性地帯と同質に作り替えた人もいるくらいだし。 だから外をほいほい出歩いている宝鏡さんは珍しい方と言えるわね。 |
で、その宝鏡さんの移動に関してだけど…… これがまた随分と派手なのよ。 |
そうなの? |
行き先にもよるけど相当な数の随員が付くわ。 宝鏡さんが公の場を歩いている姿はなかなか壮観よ。 |
多種多様な人種と年齢で構成されたスタッフと、彼らより一回り大きな体躯のボディガード達が百人単位でぞろぞろと宝鏡さんの後ろを付いていくんだもの。 その状態で宙港のコンコースなどを我が物顔で歩いて行くんだから、たまたま遭遇した人なんかは何事かと思うわよ。 |
ちなみに宝鏡さんとその同行者達を全て引っくるめて、一部で何て呼ばれてるか知ってる? |
知るわけないでしょ。 |
“宮廷”よ。 |
どこの昔の王様よ。 |
宝鏡さんに限らず永世者が自分のスタッフを大量に引き連れて所在地を離れる時は、誰々の宮廷が移動を開始した、とか表現されたりもするわね。 |
しょーもない業界用語ね…… |
そもそも本当にそれだけのスタッフを連れ回す必要があるわけ? そのあたり凄く疑問なんだけど。 |
大半は無駄に決まってるでしょ。 なのにどうして引き連れ歩いているかといえば己の威信を誇示するためよ。 どんなに力があっても見た目が小娘一人じゃなめられるもの。 |
といっても宝鏡さん、人の目がある場所だと目つきが鋭いというか怖いし、自然体のまま凄く偉そうな立ち振る舞いをするから、実際に目の前で向かい合った人になめられるってことはまず無いとは聞くけどね…… |
でも第三者視点からの映像なんかだと、実際に対峙した時のおっかなさとかはなかなか伝わらないものでしょ? だからわかりやすい装飾が必要となるのよ。 |
アホくさ。 |
そういうこと言わないの。 |
で…… そろそろ長くなってきたから今回もおしましかしらねー |
ちょっと。 結局宝鏡さんが何をしてるかについてあんまり説明してないじゃないの。 |
細かい事を気にしたらダメよ。 |