「まるで子供ですね。こんなものを動かして喜ぶだなんて……」 ――妹から兄へ |
今回は黒羽さんの生活についてよ。 |
黒羽ナガレ…… あの資本主義の豚? |
いい表現するわね。 どこで習ったのかしら? |
宝鏡さんに教えてもらった…… どういう意味かはわからない。 |
そう、よかったわねー でもそういう表現は以後禁止よ。 |
せっかく教えてもらったのに…… |
だめ。 |
じゃ、解説していくわよ。 まずは黒羽さんの住処だけど…… |
……… |
どうしたの。 |
家族から相続した高層コンドミニアムのワンフロアですって。 不動産価格はえーと……私の現在の年収だと240年分くらいかしら。 |
つまり240月影…… |
人の名前を勝手に単位にしないでちょうだい。 |
でもわかりやすい。 |
それで、そのおうちに黒羽さん以外に誰か住んでいるの? |
黒羽さんだけね。 一人暮らしよ。 |
そういえば黒羽さんに限らず家族と暮らしている子って誰もいないわね…… |
春風さんも? |
あの子は実家住まいだけど、春風さんの家族は滅多に家に帰らないらしいから実質的には一人暮らしだそうよ。 |
そう。 |
それで黒羽さんの一日のスケジュールについてだけど…… |
起きてから家を出るところまではそう変なところはないわね。 起床後にシャワー浴びて身支度をしてから出勤。 |
食事は? |
エレベーター降りている間に二十秒で栄養剤を摂取しておわり。 |
味も素っ気もない…… |
必要な成分を吸収できればどうでもいいんでしょ。 |
で、黒羽さんの普段の出勤先は都市郊外の研究施設なんだけど、そこまでの移動手段にちょっと変わったところがあってね…… |
……地中を掘っていくとか。 |
何をどう考えればそうなるのよ。 車よ、車。 |
車だったら変じゃないと思う…… |
その使い方と車の中身が問題なのよ。 黒羽さん、今時ハンドルとフットペダルを使って車を運転してるのよ。 |
珍しい…… |
そして本当に凄いのはここから。 その車というのがねー……大昔のスポーツカーなの。 つまりガソリン車なわけ。 |
ガソリン…… |
だけどそのままだと公道走れないから、トランクルーム潰して電動機を載せて動力を切り替え可能にして、スマートグリッドや都市側の管制による自動操縦にも対応させたり、現代車に必要な機能も追加しているそうよ。 |
そんな酷い改造をしているから凄まじく重量が増えて機動性は劣悪みたいね。 エンジンのパワーだけは有り余ってるから最高速度自体は結構出るらしいけど。 |
その改造、コスト掛かかりそう…… |
私の年収だと100年分くらいじゃないの多分。 |
つまり100月影…… |
だからその言い方はやめなさい。 |
そうする。 |
……… |
だけど黒羽さんはどうしてそんな変な車を持ってるの。 そういうのは宝鏡さんの趣味だと思う…… |
元はお兄さんの持ち物なんでしょ。 |
納得…… |