「おぬしの夢は叶わんよ。その企みが明らかとなれば、怪物共が必ずおぬしを殺すだろうよ」 ――師から弟子へ |
今回は夢についてよ。 |
……はあ? |
何よその不思議そうな顔は。 |
いやだって唐突でしょ…… だいたい夢っていったって色々あると思うけど。 |
そうね。 色々あるけれど、今回は寝てる時に見るアレじゃなくて将来の展望とかそっちのほうね。 |
とはいえ今現在の夢に限定しちゃうと、夢など諦めたとか、今は特にないとか、そんな回答が多くなりそうなので子供の頃の夢とかでもいいわよ。 |
そ、そう…… |
まずは誰からにしたものかしらね…… |
宝鏡さんとかどうなのよ。 あの人、夢なんてあんの? |
そんなもんとっくに枯れ果てたそうよ。 子供の頃は夢があったみたいだけど。 |
あの人が子供の頃って全然想像できないわね…… で、どんなのよ。 |
世界平和。 |
…… |
本当に? |
本人がそう言ってたからそうなんじゃないの。 |
嘘くさくて仕方がないんだけど。 |
どうかしらねえ…… 案外本当なんじゃない? |
次は春風さんよ。 |
夢は持ってそうだけどロクな夢じゃなさそうね…… |
聞き取り調査によると春風さんの夢は以下の通りよ。 |
『宇宙人に会いたい。面白そうだし』 |
……ですって。 |
相変わらずバカ丸出しね。 |
人の夢を馬鹿にするのはよくないわねー |
そりゃそうだけど…… |
ところであんたはどうなのよ。 |
私? |
そうよ。 |
私の夢はもう半分くらい実現してるのよね…… 死ぬまで続けるのが結構大変ではあるんだけど。 |
ということは軍人になるのが夢だったとか? |
違うわよ。 身内に軍人がいたし、その道を勧められていたこともあって選択肢の一つには入っていたけど、夢というほどではなかったわね。 |
だったらどんな夢を持っていたのよ。 |
立派な大人になることよ。 |
……… |
あ、何よその変な顔は。 |
それ、夢っていうの…… |
他人がどう思うかはともかく私にとってはそうね。 |
そのわりには今でも色々と愚痴ったりしてない? 立派な大人としてそれは問題があるんじゃないの。 |
別にいいのよ。 完璧人間を目指していたわけじゃないから。 |
ストレス溜め込み過ぎて潰れてもみっともないし、多少は息抜きを混ぜながら常に九割方のパフォーマンスを発揮するのが私のやり方よ。 |
つまり九割立派ならあとの一割は駄目でもいいってこと? |
駄目なのは良くないわね。 九割立派で一割普通という配分がベストかしら。 |
あっそ…… |
で、まさか貴方だけ自分の話から逃れられるとは思っていないわよね? |
あたしの夢なんて面白くもないから今回はもうこれで終わ…… |
終わるわけないでしょ。 貴方も含めれば四人で丁度半分になるからキリもいいし。 |
それで私に言われるのと自分で言うのとどっちがいいかしら? 選ばせてあげるわよ。 |
ちょっと待ちなさいよ、そもそもなんで知ってるのよ! |
知らないわよ? ただ…… |
貴方と交友関係にある人物からの聞き取り調査、定期カウンセリングの内容、睡眠中に行われた特殊機系ヴァルキリーによる精神走査、その他諸々の情報を総合した結果、おそらくこれではなかろうかという答えを宝鏡さんから教えてもらっただけよ。 |
そんなの知ってるも同然じゃない! どうしてそこまでされなくちゃいけないのよ! |
ヴァルキリーの身辺調査や管理のためには普通にされてることじゃない。 何を今更。 |
だから言われるのと言うのとどっちがいいか早く決めなさい。 私に言わせて、それは違うと言い張れば通るかもしれないわよ? 斑鳩さんならともかく貴方にそんなポーカーフェイスが出来るとは思えないけど。 |
く……殺されるくらいなら自分で死んでやるわ! |
将来の夢はお嫁さんよ! 悪い!? |
…… |
悪くはないわよ? うん、いいんじゃないかしら。 |
あたしがどんな夢を見ようがあたしの勝手でしょ! |
ええ、そうね。 |
で、それが子供の頃の夢なのか、それとも現在進行形の夢なのかは…… 聞かないでおいてあげましょうか。 |
はい終わり今回はこれで終わり! |
そうね、終わり終わり。 |
あのー、美澤さんの夢って革命戦士じゃなかったんですか? |
そんなの嘘に決まってんじゃろ。 |
嘘を教えないでくださいよ。 もし私が言うことになったら大外しになってたところじゃないですか。 |
それはない。 美澤は座して死を待つタイプではないからな。 絶対自分から言うに決まってんじゃろ。 |
しかしおぬしもなかなかやるな。 想定と全然違う答えを正面から聞かされて表情一つ変えんとは…… |
一瞬言葉に詰まりましたけどね。 |