「モスボール処置……? 本当に可能であれば受けることに異存はありませんが」 ――月影アヤカ、上司との面談にて |
久々にわらわの出番か。 |
そうね。 おかげであんたがいない間、あたしと月影さんばかり働かされてたわよ。 |
まあよいではないか、よいではないか。 出番ないよりマシじゃろ? |
なくていいわよ。 |
この照れ屋さんめ。 |
なんでそうなるのよ! |
今回はヴァルキリーの娘どもと、そのクローンについてじゃ。 |
……そんなことできるわけ? |
無理に決まっとるじゃろうが。 |
一瞬で話が終わったわね。 |
結論を最初に言っただけで、話が終わりというわけではないぞ。 |
はいはいそーですか。 |
素質者の娘どもを量産しようという試みは、数十年の昔から現在に至るまで延々と続けられておる。 まず最初に行われたのは、各種細胞を利用したクローンじゃ。 |
まあスタンダードね…… |
しかしこれは上手く行かんかった。 いずれのクローン体も素質者としての特徴が発現することはなかった。 |
大量に作ればどれか一つくらいは当たりが出るのでは、と万単位の体を作ったアホどももおったが、これも失敗に終わった。 |
あんたがやったんじゃないでしょうね。 |
んなわけないじゃろ。 やっても無駄なことはわかりきっとるからな。 |
まー、その他にも様々な実験が行われたが、いずれの試みも大して成果が上がってはおらん。 |
どんなのよ。 |
そうさなあ…… 複製とは異なるが、ヴァルキリーとして力を発揮できる期間が終わった娘どもの身体へのリブート処置とかな。 若返らせれば力が戻るのではなかろうか。という理屈よ。 似たような理屈で、身体の成長を無理矢理止められた娘も結構おるぞ。 |
それ、効果あるわけ? |
あるわけないじゃろ。 |
インチキするのは難しいってことね…… |
うむ。 |
でもさー |
なんじゃ。 |
気のせいかもしれないんだけど……みんな自分と戦ったりしてない? あれはなんなの。 |
ああうん、それな。 実際に複製体が引っ張り出されとる場合もあるからの。 |
今までの話を根本からひっくり返してどうするのよ。 |
そうでもない。 従来の科学技術では複製が不可能というだけじゃからな。 世の中には不思議がいっぱいよ。 |
現物による複製、変身、自然発生的な二重存在…… 代表的なものだとそんなところかの。 |
はあ。 何だか煙に巻かれたような…。 |