夢ソフト

「モスボール処置……? 本当に可能であれば受けることに異存はありませんが」

                               ――月影アヤカ、上司との面談にて

久々にわらわの出番か。

そうね。

おかげであんたがいない間、あたしと月影さんばかり働かされてたわよ。

まあよいではないか、よいではないか。

出番ないよりマシじゃろ?

なくていいわよ。

この照れ屋さんめ。

なんでそうなるのよ!





今回はヴァルキリーの娘どもと、そのクローンについてじゃ。

……そんなことできるわけ?

無理に決まっとるじゃろうが。

一瞬で話が終わったわね。

結論を最初に言っただけで、話が終わりというわけではないぞ。

はいはいそーですか。

素質者の娘どもを量産しようという試みは、数十年の昔から現在に至るまで延々と続けられておる。

まず最初に行われたのは、各種細胞を利用したクローンじゃ。

まあスタンダードね……

しかしこれは上手く行かんかった。

いずれのクローン体も素質者としての特徴が発現することはなかった。

大量に作ればどれか一つくらいは当たりが出るのでは、と万単位の体を作ったアホどももおったが、これも失敗に終わった。

あんたがやったんじゃないでしょうね。

んなわけないじゃろ。

やっても無駄なことはわかりきっとるからな。

まー、その他にも様々な実験が行われたが、いずれの試みも大して成果が上がってはおらん。

どんなのよ。

そうさなあ……

複製とは異なるが、ヴァルキリーとして力を発揮できる期間が終わった娘どもの身体へのリブート処置とかな。

若返らせれば力が戻るのではなかろうか。という理屈よ。

似たような理屈で、身体の成長を無理矢理止められた娘も結構おるぞ。

それ、効果あるわけ?

あるわけないじゃろ。

インチキするのは難しいってことね……

うむ。

でもさー

なんじゃ。

気のせいかもしれないんだけど……みんな自分と戦ったりしてない?

あれはなんなの。

ああうん、それな。

実際に複製体が引っ張り出されとる場合もあるからの。

今までの話を根本からひっくり返してどうするのよ。

そうでもない。

従来の科学技術では複製が不可能というだけじゃからな。

世の中には不思議がいっぱいよ。

現物による複製、変身、自然発生的な二重存在……

代表的なものだとそんなところかの。

はあ。

何だか煙に巻かれたような…。