夢ソフト

「もうやだ! わたし、こんなクソデバイスと一緒に戦いたくない!」

                           ――柏木クルル、インテリジェント・デバイスに対する愚痴

強くなるには…?

そうそう。例えばどうやったらもっと弾が相手に当たるのか!

とかを知りたいんだよ。

なるほど…。

わくわく。

……当てればいい。

えっ…?

……?

えーっと…、もうちょっと具体的に…。

弾を当てれば…当たる…。

……

弾が当たるように…当てれば…。

い、いや、ありがとうございました!

とても参考になりました!





何で敵のあんたに教える必要があるのよ。

そ、そこを何とか…。

…まぁいいわ。

ヴァルフォースは機体の性能が全てよ。

強くなりたいなら、強い機体を使うことね。

なるほど。

えーっと、つまりボクの機体をパワーアップさせないと駄目ってこと?

あなたのゴミみたいな機体を?

笑える冗談ね。

え、いや、この機体もいい機体だよ!?

使いやすいし。

…っ!

えーっと、ほら、ボクみたいにあんまり訓練してなくても、そこそこは活躍できるというか…。

…て……さい…。

え?

出ていきなさい!!

ご、ごめんなさい!





ほう、機体をパワーアップしたいと。

え?

いや、そうじゃなくて強くなりたいなーって…。

ならばおぬしの機体、面白おかしく改造してやろう!

そうじゃなくてー!!

13秒ほどの無敵の強さと引き換えに、負けると自爆する機能とかどうじゃ。

実に心踊るであろう?

え、遠慮しますー!!





勝てばいい。

そのために強くなる必要があるわけで…。

違う。勝てばいい。

強くなるのは手段にすぎん。

えーっと???

貴様も少しは脳を使え。

何より執念が足りん。

(よ、よくわからない…)





はー…。

なんだかさっぱり分かんないや…。

次は六堂さんだけど…。

多分「神の御心です」とかだよね…。

無し無し!次!





あら、うちに亡命してくれるの?

だったらとても嬉しいんだけど。

え、いや。そういうわけじゃないんですけど…。

後継がいなくて困ってたのよ。

お給金はこれくらいで、待遇はこんな感じで、なるべくならその機体とセットで来てくれると…。

違いますってばー!

くすくす。冗談よ。

そうねー、強くなるっていっても色々あるから。

例えばあなたの戦い方が、ある一定のルーチンに基づいて取捨選択が行われているとします。

その選択が相手との位置関係などの状況や、あなたの経験によってのみ左右されるとするならば…

えっと…。

そこには事象のドリフトとも言える選択の偏りが生じ、本来均一に選択されてしかるべき行動が発生しなくなる。

そういった時にその偏りに対して、相手の読みがあなたをとらえる可能性が著しく高くなり、結果として…

あ、う…。

これが第一次制圧力と仮定するなら、全ての…

し、失礼しますー!!

あら、ちょっとからかい過ぎたかしら。





うう…。あの人たち意味わかんない…。

あんた、こんなところで何やってるのよ。

あ、こんにちは。えーっと。

…?

どうやったら強くなれますか!

はぁ?

なんで敵のあんたに、あたしが教えてあげる必要があるのよ!

そ、そうなんだけどー…。

こう、もっと強くなってみんなと良い勝負したいなーとか…。

良い勝負!?

勝たなきゃ意味ないでしょうが!!

えっとえーっと…。

イライラするわねー!

だいたい、あんたの動きは単調過ぎんの!

機動力を殺さないことばっかり考えてるから、すいすい同じ方に移動し続けて!

あんなもん狙ってくださいと言わんばかりでしょうが!直しなさい!

弾撃つ時だって相手に向かって撃つばかりで!

相手だってカカシじゃないのよ!?

少しはその足りない脳味噌使って相手の行動読みなさいよ!

あんたの機動力と近接能力があれば、いくらだって強襲できるでしょうが!

弾かわした相手に追いつくくらいの性能、そのヴァルキリー持ってるでしょ!

聞いてんの!?

は、はい!

ちょっと模擬戦闘ルームに来なさい!

規律違反!?

知ったこっちゃないわよ!

そのだらだらふざけた癖と根性を叩き直してやるわ!

いや、その…。

さっさとする!

た、助けてー!