「寄らば斬ります。ざっくりと。この子午線、努々侵すことなきよう……」 ――真偶カスミ、鏖塵刀を構え |
あのさー |
ん? |
普段あたしたちが交流することって……あるの? |
ないわよ。 |
あ、やっぱり? |
何よ、交流したいわけ? |
い、いやそんなことないけど…… |
どうせ前回神凪さんと春風さんが話してたのを見てちょっぴり羨ましくなっただけなんでしょ。 |
勝手な想像しないでよ! |
はいはい。 |
ま、気を取り直して真面目に答えると、所属が同じでもない限り、普通の交流をする機会はほぼないわね。 |
合同演習や練習試合が行われる際には接触することがあるけど。 |
一人だけ勝手気儘に動き回って色々な人にコンタクトしてるのもいるけど、あの人は例外よ。 |
宝鏡さんね…… |
ただねー……近々状況が大きく変わるかもしれないという噂は聞くわね。 |
何の話? |
ヴァルフォースのレギュレーション変更と開催地の集中化。 私の耳に入るくらいだから雲の上の方ではかなり話が進んでいるんじゃないかしら。 |
宝鏡さんと斑鳩さんあたりは具体的な内容を知っているでしょうね。 斑鳩さんは地獄耳だし、宝鏡さんに至っては制度策定の当事者だし…… |
レギュレーション変更って……どう変えるのよ。 |
さあ……? |
例えば空中戦の比重を上げたり、あるいは戦場のスケール変えたり、もしくは集団戦メインになるとか…… |
最近は特殊機の進歩も著しいから、それらの機能を通常の主戦機に組み込んで使用することが認められる可能性もあるわね。 |
前にも少しそういう話があったわね。 つまり瞬間移動とかがオーケーになるわけ? |
そういうことよ。 特殊機能を実装しつつ高い戦闘力を維持できるかどうかはまた別の問題だけど。 |
うええ…… |
で、もう一つの開催地集中化についてだけど…… |
今のヴァルフォースって効率的に行われているとはお世辞にも言えないのよ。 |
一つの問題を解決しようとする度にマッチが提案されて、場所決めて、戦って、異議申し立てを受け付けて、異議そのものを認めるかどうかで試合を行う為に場所決めて、戦って、異議が通って、再試合のために場所決めて……一事が万事この調子で各プロセスにやたらと時間掛かるし。 |
だからいっそのこと一定期間を一シーズンとして一気に試合を行い、そこで得たポイントを外交上の決定権として使えるようなシステムへの変更を考えているそうよ。 |
そして、その一連の試合を一つの都市でまとめて行うというのが開催地の集中化よ。 |
なんか球蹴り祭典みたいなノリになりそうね…… |
そうね。 |
ともあれ試合が一時期に一カ所で行われるということは、自ずと参加者も一時期に一カ所へと集まるということよ。 |
つまり血の気の多い女の子達が路上で肩がぶつかったとかガン飛ばしたとかくだらない理由で争うようになるわけ。 |
なるわけないでしょ! どこの田舎の不良よ! |
あ、もし喧嘩を吹っ掛けられたら喜んで買うわよ。 武装や装甲が非展開状態の殴り合いは普通に格技の実力が物を言うし。 |
あんた立派な大人なんじゃなかったの? 少しは自重しなさいよ! |
血の気が多い好戦的な若者に絡まれて、止むに止まれず制圧するのは仕方がないでしょ? |