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「こちらが絶対に勝てると知っていることを隠し通せれば、一度だけなら必ず勝てます」

                               ――月影アヤカ、高官から神凪アイへの勝算を問われ

今回は機体のメーカーについてよ。

はあ。

毎度ことながらやる気のない返事ねえ。

そのあたりは一通り頭に叩き込んであるからどうでもいいのよね……

言うじゃない。

じゃ、問題。

神凪さんの機体のメーカーは?

ライセンス生産とか余計な事は考えなくていいわよ。

那岐島(なぎしま)エレクトロニクス。

貴方の機体は?

那岐島と群雲(むらくも)重工の共同開発。

春風さんの機体は?

オルニック・アルケミー・テクノロジーズ。

じゃあ私の機体。

ディレシア設計局。

黒羽さんの機体は?

旧更科航空宇宙研究所、現ブランデルエアロスペース。

……全部合ってるわね。

こんなの資料を一度見れば一通り覚えられるでしょ……

同じことを春風さん相手に言ってみれば?

超人を見るような眼差しで見られるわよ。

あの子は興味ない事について一切覚えようとしないだけじゃないの。

製菓メーカーの名前とかなら絶対にスラスラと出てくるわよ。

まあ……そうね。

で、メーカーの話に戻るけど……特に業界を代表する二大メーカーといえば?

那岐島エレクトロニクスとオルニック・アルケミー・テクノロジーズ。

はい正解。

前者は従来型を正統進化させたスタンダードな機体に定評があるわ。

後者は原質型の第三世代機を一早く実用化したメーカーよ。

両社ともメガコーポの冠企業ね。

ちなみに機体を設計から製造まで全て自前で手掛けるには結構な規模が必要よ。

特に大変なのがコアの精製、加工設備の用意。

錬成高炉とか?

ええ。

建設するにも稼働させるにも莫大なコストが掛かるわ。

昔はそこまで大規模な設備を必要としてなかったのよ。

第一世代機の頃なんて単純にコアと武器を溶かし込んで再凝固させればそれでオーケーなんていう適当なものだったし。

でも第二世代機の頃から貴金属や宝石を大量に混ぜたり燃やしたり、不純物取り除いたり、精緻な加工とか、色々な処理が必要になってねー……

そして今や機体の開発は錬成高炉を動かしてコアを何度も溶かしては錬成してのトライアンドエラーが必須だから、もう体力が無い所は付いていけない状態なのよ。

ウチの国が第三世代機をいつまで経っても実用化できないのもそのせいよ。

でかいのは国土だけでもうお金ないから。

だからもうどうせ無理なら中核部分については諦めて、那岐島の加工済みコアと規格に乗っかることも検討しているそうよ。

オルニックの方はダメなの?

あっちは加工済みコアだけを売ったり規格を公開する気があるのか無いのかもわからないし、もし公開されたとしても独自技術過ぎて装備を上手く作れない可能性もあるのよね……

そういえば宝鏡さんはそのあたりの設備どうしてるわけ?

あの人は少なくとも二カ所の設備を所有してるわよ。

趣味の機体を開発したり、あるいは炉とラインの貸し出しもしているという話よ。

ふーん……