「やだよ、フルオーバーキャストなんてしたくない! わたし、絶対に死んじゃうよ!」 ――柏木クルル、インテリジェント・デバイスへの抗議 |
今日はお勉強の時間よ。 |
えー? そんなの必要ないよー |
そう? |
そうだよー |
じゃあ自分の機体の名前を言ってみなさい。 |
え? |
だから名前よ。 |
…… |
…… |
…… |
覚えてないわけね。 |
えへへ。 |
驚きだわ。 さすがに名前くらいは言えると思ったんだけど…… |
だってそんなもの覚えたって意味ないじゃん! |
本当は名前を答えてもらった後で「じゃあ正式な形式名は?」って質問するつもりだったのよ? |
そんな必要なかったね! |
偉そうに言わないの。 |
はーい。 |
それで……なんて名前なの? |
ベリルウィッチ。 |
あー、そういえばそうだったそうだった。 |
少しは美澤さんを見習えば。 |
よそはよそ! うちはうち! |
ただの怠慢でしょ。 |
で、多少の説明を加えると……分類は主戦機。原質型。 設計及び製造はオルニック・アルケミー・テクノロジーズ。 名前長いから同社のことは今後略称のOATで呼ぶわよ。 |
製造数は十機に満たず、一般販売は行われていないわ。 第二世代機と比して非常に高いポテンシャルを持つけど、従来機よりも習熟が困難という欠点あり。 |
そのため同機の使い手としてヴァルフォースあるいは実戦に参加しているのは春風レンと柏木クルルの二名のみ……っていう話なんだけど、そうなの? |
何が? |
扱い辛いとか、まともな使い手が二人しかいないとか。 |
ボクは使うのが難しいとか思ったことはないけど……みんなダメみたいだからそうなんじゃない? だから今後は他の子達でも扱えるようにしていくとかラボの人達が言ってたよ。 |
改良の余地はあるということね。 |
でもってボク以外に今も使ってる子は…… 確かにクルルちゃんくらいしか知らないや。 |
形は全然違うんだけどね。 ボクの方はヴァルフォース向けで、あっちは…… |
戦争用でしょ。 |
見たことあるの? |
あるわよー? えらい目にあわされたわ…。 というか肩から先をレーザーカッターで斬り飛ばされたんだけど? その後もお腹にいっぱい穴開けられたり死ぬかと思ったわよ。 |
こっちも首元から垂直にパイルバンカーを撃ち込んで倍返しにしたけど。 あの場できっちり殺れなかったのが悔やまれるわ。 |
あー、聞きたくないそういうの聞きたくない。 |
ならやめておきましょ。 あなたがそういう場面を見ることは無いでしょうし、ヴァルフォース設立のおかげで私もそういう目にあう機会も減ったしね。 |