「え? 地図の形を変えるだけの簡単なお仕事? エリカもなかなか言うじゃなぁい……」 ――水無月ユーラ、ブリーフィングにて |
今回は機体のバリエーションについてじゃ。 |
バリエーションねえ…… |
どこからどこまでが一つの機体のバリエーションなのかというのも分類が難しいところではあるが。 |
武器を変えるだけなら大抵の機体でいけるわよね? |
いけるな。 おぬしの機体や月影機あたりが代表例じゃの。 選択肢の豊富さでは他の追随を許さんよ。 |
神凪機も武装の交換は容易なんじゃが、ありゃ現在の主兵装が非常に高い完成度を持つためにあまり交換はされんな。 |
じゃあ他の人達は? 特に斑鳩さんとか六堂さんとか…… |
あやつらが装備を変更することも滅多にねえのう。 既にあるものだけで大抵の戦い方が可能じゃからの。 例えば斑鳩の場合、光線を紐のように用いて相手を縛り上げたりな。 |
なによそれ。 |
それでも六堂に比べればまだマシじゃよ。 六堂の方は最早できぬことを探す方が難しい。 |
斑鳩や六堂ほどではないが春風の杖もかなり使い勝手は良いな。 その場その場で撃ち出す力の形質を大幅に変化させられるからの。 |
じゃあ黒羽さんはどうなの。 |
あやつはなー…… 短機関銃にしてもフェザーナイフにしてもなんとなく積んでるってだけじゃよ。 武装に関してはあやつが一番恵まれてないのではねえかの。 |
背中から出るレーザーは? |
あれも完成度が著しく低い代物じゃな。 コアの持つエネルギーを円滑に射出できておらん。 逆に言えば伸びしろがいくらでもある、ということなのじゃが。 |
軽自動車にレース用のエンジン積んでるような機体じゃからなあれは…… 強靱なフレームさえ用意さえできれば大きく化けるが、そんな技術には恵まれておらんのが悲しいところよ。 |
ところでさー、武器ってそんなに種類が必要なものなの? |
必要だから作られとるんじゃよ。 行き着くところまで行けば六堂のように単一の装備で全てを賄えるようになるわけじゃが、進化の途上にある通常の機体ではそうもいかん。 |
極論を言えば武器なんぞなくとも構わん。 わらわのように純然たる力をそのまま叩き付ければ済むことじゃ。 しかしな、普通の人間にはそれがなかなか難しい。 |
用途に応じた然るべき形を持った武器が必要なのじゃよ。 おぬしらは現代の常識に縛られておるからの。 |
ってことは……常識がなければ好き勝手な攻撃ができるわけ? それだと頭の配線がぶちぶちに切れてるキジルシとか凄く有利な気がするんだけど。 |
さすがにそこまで美味しい話はない。 本人がどう思っていようと周囲の常識から逃れることはできん。 |
あいつにそんなことができるはずがない、と思われていれば必ずや足を引っ張られることになる。 本人の根拠無き思い込みには限界というものがあるわけじゃ。 |
つまり何かしらの裏付けがあればいい、ってこと? |
そういうことじゃな。 わらわのような永世者は人間にどう思われようとも己が信じる力を振るうことができる。 自分がそのような存在であるという事実は簡単には反故にされぬよ。 |
誰も信仰する者がいなくなった時に神は死ぬとかそういう話に似てるわね…… |
元々存在しない神なのであれば、それで死ぬのは当然じゃの。 しかし人がおらずとも最初から力を持っていた神ならば、誰に信じられなくとも何ら関係はなかろうよ。 |
この世界に神様っているわけ? |
そんなものおらんよ。 少なくともわらわは見たことねえのう。 |
んで話が脱線してきとるから少し軌道を修正するとな…… 春風機のような原質型の第三世代機は、現状を鑑みるにもはや従来の常識に沿って武器を作る必要なんてないんじゃね?という思想を背景として製造されとるわけじゃ。 念じるだけで敵を討つ術があるのなら、そのほうが余程スマートではないか、とな。 |
そしてその試みは一応の成功を見た。 造り上げられた機体、ベリルウィッチをまともに動かせたのは春風と柏木のたった二名だけじゃったが、それでも充分な成果を上げたと言ってもよかろうよ。 |
やっぱりバリエーションの話からは少しズレてる気がするんだけど。 |
うむ、わらわもそう思う。 じゃから続きはまた今度な。 |
うーわー適当…… |
こまけえことはいいんじゃよ。 |