「斯様にベリルウィッチは非常に優れた機動性を誇りますが、その反面、致命的な弱点もあり――」 「もう説明はいいよー……動かせばわかるから大丈夫!」 ――春風レン、技術スタッフの説明を聞き流し |
これより最強を決める!(くわっ |
何ですか藪から棒に。 |
言葉通りの意味じゃよ。 |
え、なになに? なんかやるの? |
うむ…… これより全員で勝負をして、誰が上かをはっきりとわからせてやるのじゃ。 |
またくだらないことが始まった…… |
うるさいわ。 |
最近は態度のでかい奴らが増えたからの。 ここいらで一発、身の程をはっきりとさせてやらねばならぬ。 |
あんたより態度のでかい奴がどこにいるってのよ…… |
だいたい勝負といっても何をするんですか。 まさか今から試合や殺し合いをするとか言いませんよね? |
当たり前じゃろ。 まともにやると時間が掛かってたまらんわ。 |
勝負の方法は…… まあスモウでいいじゃろ。 |
シンプルイズベストじゃ。 短い時間でケリもつくしの。 |
武器の使用と顔面への張り手は禁ずる。 ぶん殴ると流血沙汰じゃしの。 押し合い転がし合いのみの勝負よ。 |
確かにそれなら短い時間で決着が付きそうですが…… 戦う順番とかはどうするんです。 |
適当でええわい。 負けた奴が脱落していけば最後に残った奴が最強じゃ。 細かい順位などどうでもええからの。 |
ほんっと適当ね…… |
よし、ではさっさと始めるぞ。 モードはスタンバイではなくドライブな。 まずは神凪と春風からやれい。 |
え、ボクが最初でいいの? |
いっぱい遊べるぞ。嬉しいじゃろ? まー、勝ち続けられればの話じゃが。 |
よーし、負けないぞー |
くだらなくても勝負は勝負…… 手は抜かない。 |
土俵はこれな。 この枠から外にはみ出したり地面に転がされたら負けじゃ。 |
さらりと変な魔法陣を展開しないでください。 というかこれ、転がされたら激痛が走るとかないですよね……? |
それでもよかったが、いちいち悲鳴を聞かされるのも煩わしいわ。 変な仕掛けなどありゃせんよ。 |
どうでもいいからさっさと進めなさいよ。 |
ではおぬしら、位置につけい。 |
……… |
……… |
よし、ゴー! |
そりゃああああああ! |
………っ…… |
ごろん |
はわっ!? |
へ? |
勝負あり。神凪山の勝ちー 神凪山はその場に残れ。 春風丸は無様な敗者席に行けい。 |
一瞬で勝負がつきましたね。 |
春風のやつ、速攻で転がされおったな。 |
え、えー……? おかしくない? どうしてこんなにあっさり負けちゃうの!? |
だってベリルウィッチには取っ組み合いのパワーが全くない…… この点に関しては第二世代機にも劣る。 |
そんな弱点があるなんて聞いてないよ…… |
バカめ。 自分の機体の特性ぐらい一から十まで把握しておかんか。 どうせ今まで一度も引っ掴まれたことがねえんじゃろおぬし。 |
うん、ないね! |
そういう基本的なことはスタッフから説明を受けている筈なんですけどねえ…… |
右から左へと聞き流してたんでしょ。 この分だと他にも穴がありそうねこの子…… |
うううう……でも、でも、だとしたら、おすもうのルールじゃボクにはどうしようもないってこと? |
そうじゃよ? スモウで勝負をするという時点でお主に勝ち目なんぞないわ。 圧倒的な勝率ゼロパーセント、天地が逆しまにひっくり返っても勝てる道理はどこにも、ない! |
えー、それはひどいよー |
ひどい、じゃと? おい月影、こいつに何か言ってやれい。 |
……春風さん? よく聞きなさい。 |
私とかはね、いーっつも、この機体で勝つには無理があると思いながら戦ってるのよ。 |
うむ、月影が死んだ魚のような目で言うと説得力があるな! |
誰が死んだ魚ですか。 |
うー…… |
では気を取り直して次の試合に行きたいところじゃが……今回はここで中断な。 |
次回に続く、と。 |