「いち……に……さん、し、ご、ろくななはちきゅうじゅう。勝った」 「おい、今のカウント速すぎじゃろ」 ――神凪アイと宝鏡メイ、指相撲で戦い |
次は第四試合か。 |
そうなるねー |
まさか月影が美澤に負けるとはな……少々予想外じゃったわ。 |
返す言葉もないですね。 あのまま勝てると思ったんですが…… |
油断したわね。 |
さて、次はわらわが出るか…… 他の面子はまだ来とらんし、これ以上美澤を調子に乗らせるのも面白くねえからの。 |
どうやらネクストチャレンジャーは宝鏡錦の模様! 解説の神凪さん、勝敗のゆく |
メイが勝つ。 |
……だそうです! |
あんた、まさかロボットに乗ったりするんじゃないでしょうね…… |
んなわけあるか。 あんなもんに乗ってたらすぐにはみ出しちまうじゃろ。 このまんまじゃよ、このまんま。 |
ならいいけど。 |
ねー、月影さーん。 |
ん? |
宝鏡さんってパワーはあるの? |
手段を問わずということなら随分とあるだろうけど…… この手の勝負でインチキするタイプじゃないし、そんなにないんじゃない? |
ふむう。 |
よし、掛かってくるがいい。 秒殺してくれるわ。 |
……ほんっとえらそうねあんた。 |
それでは第四試合ー |
はい、開始。 |
……っ! |
美澤里、飛び出した! |
よいせ。 |
くるん |
え? |
ずだだん |
はい、勝負あり。宝鏡錦の勝ち。 |
はやっ! |
順当な結果…… |
な、何なのよ今の…… |
普通に投げただけじゃが? |
あんたほとんど動いてなかったじゃない! |
美澤さんが宝鏡さんと組み合おうとして向かっていって…… |
宝鏡さんが美澤さんの手首に掌を沿えて、そこから一呼吸で美澤さんが一回転してたわね。 |
長々と生きておればこうもなるわ。 人が武を修め一人前となるまで十年、真の達人となるまで百年。 そして達人の域から更に十倍の功夫を積んだ結果がこれよ。 人間がどれだけ修行しようと、千年掛けて技を磨けるわらわに勝てる術はない! |
さっさと死んだ方が世のためですねほんと。 |
うるさいわ。 |
私もそう思う…… |
おぬしまで言うか。 |
…… |
ほれ、おぬしも呆けとらんでさっさと無様な負け犬席に行けいー |
敗者席じゃなくて負け犬席なんだ? |
言い方が違うだけで私たちの隣でしょどうせ。 |
(ふらふら) |
魂の抜けたなかまがふえたよ! |
しかしここから先の試合はどうするんですか? もう全員が一通り戦ったことになりますけど…… |
うーむ、他の連中もそろそろ来るはずなんじゃが…… |
……相変わらずくだらんことをする奴だな貴様も。 |
なんじゃ、居たんならさっさと姿を見せんか。 |
ジャーンジャーン。 |
それと美澤、今の無様な負け方はなんだ? 怪物の一人も満足に倒すことができんのか。 |
倒せないからこその怪物なんじゃないかなあ…… |
(こくこく) |
まあいい。 負け犬共はそこで見ていろ。 |
意外とやる気あるわね貴方。 |
メイにでかい顔をさせたくないだけだと思う…… |
ああ、その通りだとも。 |
御託はええわ。 その気があるなら今直ぐリングに上がるがいい! |
では第五試合だよー |
あんなのどうやって倒す気よ…… |
あ、放心状態から戻った。 |
宝鏡錦対斑鳩龍、開始してください。 |
どんとこーい。 |
……… |
すたすた |
……む? |
斑鳩龍、無造作に宝鏡錦に近づいていく。……何をするんだろ。 |
そもそもな、こんな奴と無防備に組み合いをするのが間違いだ。 |
むんず |
斑鳩龍、素早く手を出し宝鏡錦の頭をつかんで持ち上げたー! |
ぬぐ、おぬしなにをする、放さぬかこら!(じたばたじたばた) |
宝鏡錦は宙吊り状態だ! 足が地面に届いていない! |
ああ、放してやるとも。 |
斑鳩龍が宝鏡錦を掴んだままスピンして……あ、投げた。 |
ぽいっ |
あ。 |
あ。 |
べちゃ |
むぎゅ。 |
宝鏡錦、土俵の外に投げ捨てられて負け犬席にダイレクトイン! |
……負け犬席へようこそ。歓迎する。 |
とりあえず斑鳩さんの勝ちですね。 |
またなかまがふえたね! ……でも頭とか髪の毛を掴むのって反則じゃないの? |
いいんじゃない別に? どうせルールなんてあってないようなもんだし…… |
……ぐぬぬ、ぬかったわ。 |
まあ……こんな具合だな。 |
ちょっと、あんた本当に真面目にやってたんでしょうね。 いくらなんでもあっさり負けすぎでしょ! |
アホを言え。 斑鳩の奴、あれでなかなか隙がねえんじゃよ…… わらわを掴む時の動きも全く無駄がなかったしの。 |
近付く時も歩幅の刻みとテンポを一歩ずつ微妙に変えてましたね。 あれは間合い計るのが難しいですよ。 |
腕も身体の振りとは無関係なタイミングでひゅばっと出てた…… |
…… |
なんであんたたちはそんなところに気付くのよ。 |
見ればわかるでしょそんなの。 わかったところで自分が対応できる自信はないけど。 |
わからないのはボンクラのあかし。 |
がー!! |
結局、人の姿をしている限り可能な動作には自ずと制限が掛かる。 相応に警戒をしていれば簡単に投げられることもない。 |
ましてやこれだけ体格差があれば技量の差も充分に埋められる。 要はやり方しだいというわけだ。わかったか美澤? |
ぐぐぐ…… |
くそ、遠慮なくドヤ顔をしおって…… まあええわ、勝ちは勝ちじゃ。 |
とりあえずおぬしは次の挑戦者が来るまでそこで待てい。 |
私も暇ではないんだがな…… |