夢ソフト

「また仕留めたのか。お前……単機での乙女殺しはこれでもう何度目だ?」

「四度目だな。人類レコード更新中だよ。ここは全く良い戦場だ」

                              ――石動カズサ、同僚との会話

………

うーむ……

ねー、いつまで待てばいいのー?

本当に来るんですか?

来るはずなんじゃがなあ。

あやつは最強という称号のためなら何を置いても駆け付けると思ったのじゃが……

……来た。

あ、黒羽さんだ。

……待たせたわね。

貴様が次の相手か。

おい斑鳩、わらわを倒したからといって手を抜くなよ?

わざと負けられてもつまらんからな。

気は乗らないが善処はしてやる。

好きになさい。今の私は無敵よ……!

何なら全員と戦ってあげても構わないわ。

今日の黒羽さんは微妙にテンションが高い……

ん、んー……?

どうしたのよ?

おい、黒羽。

なによ。

………

………まあ、ええか。

別に反則なわけでもねえしの。

ふふ……

黒羽さん、そろそろリングに上がってねー

ええ、いいわ。

貴方達はそこのゴミ捨て場席で私の機体が最強の栄冠を手にするところをじっくりと見ていなさい。

わー、すごい自信。

いつものことでしょ。

私は勝つ。負ける道理はどこにも無いわ。

それは絶対に絶対よ、ええ、絶対なの、明らかに!





これはどちらが勝つか、わからんな。

そうですか?

技量と機体の性能を考えれば斑鳩さんの方が圧倒的に有利だと思いますが……

普段であれば、な……

今の黒羽はやべえぞ。あやつ色々とキメておる。

未来視の有無による差は無いも同然じゃろうな。

無茶なことしますねえ……

加えて機体も別物よ。

見た目は同じじゃが、あれは普段のあやつが使っておるパーシャルエクリプスではない。

旧黒羽研が生み出した世界最強の出力を誇る八発機、その原型たるエクリプスじゃ。

あれを全力でぶん回した場合、おそらく神凪と美澤が二人がかりで押しても止まらんぞ。

まー、んなことすりゃ黒羽も吐血するじゃろうが。

ぶっちゃけ普通に戦えば黒羽が斑鳩に勝つ可能性はゼロにも等しいからのう。

黒羽もそれを知っているからこそ持てる手段を全て使って形振り構わず勝ちにきたな。

うーん、これ、お遊びのおすもうなんじゃなかったっけ……?

そのはず……

要するにこの人達、勝負事になると簡単にエスカレートするタイプなわけね……





それでは第六試合ー

斑鳩龍と黒羽風、位置についてー

殺し合え!

……っ……

………ッ!

ついに掛け声が殺し合えになりましたね。

黒羽の方はもう殺意ビンビンじゃしのう……

大人げない人達……

お遊びの空気はもうどこかに飛んで行ってるわね……

両者、正面から勢い良くぶつかったー!

深々と組み合って真っ向勝負です!

ずごごごごごご

わぷっ……風圧がすごい。

実況席……じゃなかった、負け犬席は机と椅子ごと吹き飛びそうです。

なんで二人とも思いっきりブースター噴かしてんのよ!

というか二人ともヴァルフォース用の出力制限してないでしょこれ、全力でしょ!!

ぎゅいーんぎゅいーんぎゅいいいいいいいんぶおおおおおおお

あーあ、やってもうた。

先に制限カットしたのは黒羽さんのほうですね。

斑鳩さんも身体壊されるわけにはいきませんし、応じるしかないですよねえ……

まー、黒羽が頭のネジ緩んだ状態だとこうもなるわなあ……

それはそれとして勝負は勝負。

押しているのは……黒羽風のほうだー!

一歩一歩前に進んでいる!

展開自体は意外と地味ね……

今の黒羽の反射能力は極まってるからの。

斑鳩も下手な動きをすれば返し技を食らうことがわかってるんじゃろ。

となると力勝負になるわけじゃが……こーりゃ黒羽の勝ちか?

どうしたの?

貴方の機体にはその程度の力しかないわけ?

だったらそのまま壊れなさい! 存在する価値もないわ!

ぐっ……

黒羽風、更に斑鳩龍を押す、押す、押していく!

斑鳩龍は追い詰められた。あと一歩でリングの外だー!

これはもう勝負ありかしら……

………

………ぬ?

………

………おい、宝鏡。

なんじゃい。

こいつ、気絶しているぞ。

なぬ? しかしまだ黒羽はおぬしのことを押して………

………

ほんとじゃ。完全に意識が飛んどるな……

気絶してもまだ組み合ってるとかどんだけよ……

……呆気ない幕切れ。

えーと……つまり試合終了?

そうじゃなあ。

さすがにこれは黒羽の負けじゃろ。

勝者、斑鳩龍ー!

で……こいつはどうする。

負け犬席に投げ捨てておけい。

そうか。

ぽい

なんという酷い扱い……

敗者なんぞ手荒に扱われるのが当然よ。

やれやれ……

ともあれ斑鳩、おぬしが勝者じゃ。

ユーアーチャンピオン、コングラッチュレーションよ。

では、もう帰っていいか?

まー、帰ってもらってもよいのじゃが……

一応まだ出ていない子がもう一人いたわよね。

六堂さん?

うむ……しかし、あれはなー……

やれというのなら構わんぞ。

後でまた呼び出されるのも面倒だからな。

そうか?

なら一応呼んであるからもうちょい待っとれ。

うーん、惨劇の予感がする……