「ビースト美澤、今期初の連勝、決め技は連続ヘッドバット」 「また勝った! 狂犬エレナ三連勝、サソリ固めでフィニッシュ」 「美澤エレナ破竹の快進撃、無慈悲なブレーンバスターで四連勝目を飾る」 ――大衆報道の見出しから |
決戦の時が来た! |
ごろごろごろ がらがらぴしゃーん |
唐突に雨雲と雷を呼ばないでください。 |
よいではないか、減るもんでもなし。 |
減るかどうかは知りませんが、迷惑です。 |
避雷針設置! |
他人の槍を勝手に地面に突き刺さないでほしい…… |
ちぇー いいじゃん、けちー |
やるなら自分のでやるべき(ずぶずぶずぶ |
ってそれボクの杖じゃん! 根本まで埋めないでよ! |
何やってるのよ貴女達は…… |
バカのツートップなど放っておけ。 |
そういえば黒羽さんは? |
まだ気絶したまんまよ。 |
それでは決勝戦じゃ。 栄えあるファイナリスト達よ、入場せよ! |
赤コーナー、斑鳩セツナー! |
あのな、さっきから私は土俵に上がったままだろうが。 入場もクソもなかろう。 |
雰囲気出すためじゃから細かいことはどうでもええんじゃよ。 |
そうそう。 |
これからは宝鏡さんと春風さんを一緒にしないほうがいいわね…… この二人、くっだらないことをするのに関してだけは気が合ってるし。 |
(こくこく) |
青コーナー、六堂マリアー! |
もうリングなんだか土俵なんだか…… |
お呼びですか? |
うん、呼んだ呼んだ。 |
来たか…… |
けれども私はここで何をすればよろしいのでしょう? |
おすもう。 |
もすかう? |
いやそれ全然違うから。 |
……おすもう知らないの? |
はい。 |
あー、構わん構わん。 おぬしは知らなくても問題ないわ。 |
とりあえずそこの輪の中に入れ。 そして膝や手を付いたりしてはならん。 輪の外にも絶対に出るな。 |
それだけでいいのですか? |
あと、おぬしの羽は外に出しておけ。 羽を飛ばしたり何かを発射してもいかんぞ。 |
わかりました。 |
で、な…… おぬし本気を出してみろ。 |
……よろしいのですか? |
よいぞ。こういう時くらいは許してやる。 まー、わらわが許す筋合いのもんでもねえんじゃが。 |
少し時間が掛かりますが。 |
待ってやるわ。 |
では、急いで準備します。 |
えーと……権限昇格、いっぱい来たれ。 |
がしゃがしゃがしゃどさどさどさ |
六堂さん、空中の裂け目から羽をいっぱい取り出したー……というか積み上げてる? |
……ちょ、ちょっと、何枚あるのよそれ。 |
五十……六十……… |
がしゃがしゃがしゃがしゃどさどさどさどさ |
……… |
……少なく見ても百枚以上はある。 |
さっきも言ったが羽を飛ばす必要はない。 引き出せる限りの力は全ておぬしの身体に回せ。 |
そうします。 |
ういーんういーん |
うぉんうぉんうぉん |
ぶるるんぶるるん |
なんか振動したり音を上げてるんだけど…… |
六堂にパワー注入しとるんじゃろ。 本来、羽が飛んだり撃ったりする力を全部六堂のフィジカルに回しとるっつーことじゃな。 |
ご明察。 |
あ、しゃべった。 |
クソ姉貴は黙っとれ。 次喋ったら殺すぞ。 |
できもしないくせに。 |
おい宝鏡……これは、なんだ? |
おぬしが嫌いな怪物どもの最たるものじゃよ。 最強の永世者にして第六世界と、その力を振るうための人型じゃ。 まー、即死せんように注意しろ。 |
注意しろと言われてもな…… この様子だとおそらく貫手ひとつで私の身体も豆腐のように貫通されるんじゃないか。 |
へいへい、斑鳩さんビビってる! |
ならば代わるか? |
……… |
………遠慮しとくね! |
それでは位置につけー |
……… |
……… |
処刑せよ! |
もはや勝負ですらないと…… |
ちっ……! |
斑鳩龍、飛び出したー! |
きゃっ…… |
驚いた六堂皇、咄嗟に手を前に出す! |
対衝撃! |
――まずい。 |
宝鏡錦、ヘルメットを被ってその場に伏せる、神凪山はボクを盾に……って……へ? |
どっかーん |
おーい……おぬしら、無事かー? |
問題ない。 |
問題大ありだよ! ひどいよ神凪さんー! |
盾にされたわりには平気そうではないか。 おぬし、意外と頑丈じゃな。 |
で、黒羽は……いかんな、どっかに吹っ飛んでいってしまったか。 まあ完全に無防備じゃったからな…… |
月影さんと美澤さんは? |
吹き飛ばされていくのがちらりと見えた…… |
直撃した斑鳩はどうなったかのう…… 胸元をタッチされただけじゃから生きてるとは思うが…… |
とりあえず見当たる範囲にはいねえじゃろうな。 おそらく地平線の彼方で地面に頭から突っ込んで埋まっとるんでねえかの。 角度次第では重力振り切ってまだすっ飛んでる途中かもしれんが。 |
なんと痛ましいことでしょう…… |
どの口がそれを言う。 |
まー、皆いなくなってしもうたから遊びはこれでお開きじゃな。 解散じゃ解散。六堂も帰ってよいぞ。 |
結局最強を決するという話はどこにいったの…… |
んなもん最初から六堂に決まっておる。 わらわは適当な口実で美澤や斑鳩をからかいたかっただけよ。 斑鳩には破れてもうたが、美澤は倒せたから満足じゃ! |
私はどうせそんなことだろうとわかっていた(キリッ |
よくわかっとるではないか。 さすがおぬしは他の連中より付き合いが長いだけあるな。 |
(ほんとかなあ……) |
こうして宝鏡さんの思い付きで始まったおすもう大会は幕を閉じました。 |
けれどボクたちはまだ知らなかったのです…… |
数日後、宝鏡さんが「今度はテニスをやるぞ!」を言い出して、再び血の雨が降ることを…… |
ないない。それはない…… |
ないの? |
あったりまえでしょ! |
ちぇー |