「……十四連敗……だと……」 ――斑鳩セツナ、スポーツ紙を眺め |
それでは次のターゲットをリサーチだ! 準備はいいかな美澤助手! |
誰が助手よ! |
美澤さんが。 |
いやそうじゃなくて、どうしてあたしが助手をしなくちゃならないのかってことなんだけど…… |
細かいことなんてどうでもいいじゃん。 |
あんたねー…… |
というわけなんだけど、斑鳩さんって何か趣味とかってある? |
あるとでも思うのか? |
そりゃこの人にはそんなもんないでしょ…… |
えー |
じゃあさー、興味があることとか。 |
興味、か……となると絞り切れんな。 |
んー……? |
もしかしてあんた、特定の趣味にうつつをぬかすわけじゃないけれど興味の対象自体はかなり広いタイプってこと? |
そんなところだ。 |
いつだか色恋についてはばっさり切ったけど他はそうでもないわけね…… |
人的諜報を行う以上は一般教養を欠くことはできん。 そして世俗に通じてなくば思わぬところで落とし穴に填まるからな。 |
人格、知識ソフトで補うにも限界はある。 それに頼りすぎると受け答えに不自然さが滲み出るのを避けられん。 |
じゃあ逆に言えば斑鳩さんは何でも知ってるってこと? |
無茶を言うな。 一個人が身に付けられる知識など高が知れているものだろう。 |
それでも貴様等よりは遙かにマシか。 特定の分野を除けばあくまで広く浅くではあるが。 |
……なーにを気取ってるんじゃおぬし。 |
あ、宝鏡さんだ。 |
わらわは知っておるぞ。 おぬしの足取りが意外な場所で捕捉されていることをな……! |
何の話だ。 |
今年に入ってから合計三回、おぬしは同種の施設に足を運んでおる。 直近だと白響スタジアムじゃな。 |
………それって野球場じゃ。 |
身に覚えがないな。 |
しらばっくれるつもりか? ならば……おい、ウソ発見器ちょっとこい。 |
人をウソ発見器扱いはどうかと思う…… |
あ、今度は神凪さんだ。 |
どうよ神凪。 斑鳩はウソこいとるか? |
……… |
……… |
……… |
これはウソをついている。 確定的に明らか。 |
よし、決まりじゃな! では先程の目撃例が事実だとして話を進めるぞ! |
斑鳩が訪れた先の球場の状況には共通点がある。 |
それはホーム、アウェイの違いはあれど、いずれもエンドア・デススターズの試合中だということじゃ! |
ぐ……! |
即ち導き出される結論は一つ! |
……おぬし隠れ野球ファンじゃろ。 しかもデススターズの。 |
デススターズって……あの万年リーグ最下位の暗黒星球団? |
黙れ春風。 それ以上口を開けば容赦はせんぞ。 |
苦難の先にこそ栄光はある。 今は耐えるときなのだ。 |
趣味をバラした宝鏡さんよりも春風さんの方に舌鋒を向けるあたりが色々と物語っているわね…… |
耐える時って言ったって…… もう何年も前からずっと最下位だよ? |
明けぬ夜はない! と思うのだが…… そう言う春風は一体どこの球団が好きなんだ。 |
ボクはねー、タムリエル・ドヴァキンズだよ。強いし。 |
……… |
おいこら中指おっ立てんな。 |
……は。いかん、つい。 |
とりあえず斑鳩さんは野球ファンってことでいいのかなあ…… |
いいんじゃないの…… この様子だと他にも隠し持ってそうな気はするけど。 |
おい斑鳩。 |
何だ。 |
もしおぬしがわらわに頭を下げてお願いしますと言えば…… デススターズの親会社を代えて金回りが良くなるようにしてやってもよいぞ。 どうする? んー? |
あのな……寝言も大概にしろ。 まさかそのような欲望のために貴様の力に縋るほど私は恥知らずではないぞ。 |
まー、そりゃそうだわな…… |
……と、普段なら言うところだが少し考えさせてくれ。 |
考えんのかよ! |