|
「私は闇に溶け込み得物を狩るすごうでのハンター……いわば夜鷹」 「シズカ、その表現はいかがなものかと思うが」 ――夜霧シズカと担当官 --------------------------------------------------- |
|
美澤さんってどうせ趣味とかないでしょ? |
|
どうしてあたしだけそんな聞き方で始めるのよ! |
|
だってー、なさそうだし。 |
|
決めつけないでくれる? |
|
じゃあ、あるの? |
|
……… |
|
………ありません。 |
|
だよねー |
|
というわけで今回はこれでおしまいです! お疲れ様でしたー |
|
解散! |
|
解散、じゃねえわアホ! |
|
ポコン |
|
あいだっ |
|
おぬしもインタビュアーの端くれならもうちょい引き延ばして話を広げてみせんかこのたわけ。 |
|
いきなり出てきて人の頭を叩かないでよー |
|
あたしはもうこれで終わってもいいけどね…… |
|
うーん………じゃあさー、美澤さんって何ができるの? |
|
得意なものがあるわけじゃないけど……一通りのことはできるわよ。 |
|
学業は。 |
|
片手で数えられる程度の順位には。 |
|
家事とかは? |
|
自分の身の回りについては完璧なつもり。 |
|
金の管理は。 |
|
無駄遣いはしないわよ。 |
|
運動は? |
|
毎日してる。 |
|
むしろ苦手なことってあるの? |
|
あまりない、と思う…… |
|
……宝鏡の旦那、こいつはとんだ完璧超人ですぜ! |
|
今挙げられたものの大半がダメなおぬしからするとまあそう見えるわな…… |
|
じゃが完璧超人とは言い過ぎじゃな。 どれも程々にできるということでボチボチ超人はどうじゃ? |
|
それいいねー よっ! ボチボチ超人! |
|
いらないわよそんな呼び方! |
|
……で、趣味は? |
|
だからないわよ。 |
|
もったいないねー 何でもできるくらい要領がいいなら何でもやってみればいいのに。 |
|
そんなこと言われても…… |
|
あたしだって誰かに勧められたり、自分で興味持ったりで色々やってはみたけど、どれもしっくりこないのよね…… |
|
わざわざ時間使ってこんなことやる必要あるのか、って考えたら何かこうのめり込めなくて。 |
|
考えるんじゃなくて感じようよ。 |
|
難しいこと言わないでよ。 |
|
そんなことだから必要性を感じるヴァルキリー周りの知識ばっかり身に付いていくわけじゃな。 |
|
ぐ………だったらどうすればいいってのよ。 |
|
知るかい。 |
|
他人事だからって思いっきりぶん投げてるわね…… |
|
そりゃ他人事じゃからな。 おぬしが何をしようがわらわには関わりのない話よ。 |
|
じゃが、まー、別に今のままで問題ないんじゃねえか。 |
|
へ? |
|
おぬしはヴァルキリー稼業が嫌いなんじゃろ? |
|
そりゃまあ一日でも早く辞めたいと思ってるけど。 |
|
しかしなっちまった以上は死なない努力をしとるんじゃよな? |
|
そうだけど。 |
|
じゃが引退した後に職業選択の余地があるよう、夢を叶えられるよう、やることもきっちりやっとるじゃろ? |
|
結構きついけどなんとかね…… |
|
であればどう考えても問題はないの。 その結果として余暇がなくともそれは仕方がないことじゃ。 |
|
おぬしのことをつまらぬと言う奴がいれば言わせておけ。 誰もが面白おかしくあらねばならんという理由はない。 己に恥じることがなければそれでよかろ。 |
|
宝鏡さんがまじめなことを言ってる。 明日は磁気嵐の予感! |
|
えーと、もしかして励ましてくれてるわけ? |
|
他の意味にでも聞こえたんかい。 |
|
なんか調子が狂うけど……そういうことなら一応お礼を言っておくわ。 |
|
うむ。素直が一番じゃよ? |
|
おい。 |
|
なんじゃい。 |
|
しかし美澤は十年後もヴァルキリーを続けているんじゃなかったのか? |
|
その可能性が高いな。 |
|
なのに中途半端な励ましを与えてどうする。途中で潰れるだろう。 いつものように面白おかしくやれとでも言ってやる方がマシだろうに。 |
|
やれるはずがないからじゃよ。 おぬしはおぬしがしていることを愉快にできるのか? |
|
……まあ、難しいな。 |
|
つまりそういうことじゃよ。 |