「鏡に目を向けるといつの間にか勝手口から入ってきた熊が自分の後ろに立っているのが見え……」 「教官それ怪談つーかリアルに怖いだけの話です」 ――月影アヤカと隊員達、真夏の夜に --------------------------------------------------- |
『飽きたから出掛けてくるね!』 『美澤さんはきちんと他の人の趣味を聞き取りしておいてね!』 『さぼっちゃだめだよ!』 |
……… |
どーしろってーのよ! |
いきなり大声上げてどうしたの。 |
見ての通りよ。 |
……… |
なるほど。 春風さんがこのメモを残してどこかに消えた、と。 |
いっそガン無視してやろうかしら。 |
いいんじゃない? |
え、いいの? |
一方的な頼み事なわけでしょ。 |
それはそうだけど…… 頼まれた以上は一応やっておかないとなんかむずむずするというか。 |
あっそ。 |
まあせっかく対象が目の前にいるんだからさっさと済ませることにするわ…… |
えーと、月影さんのご趣味は? |
趣味ねえ…… 昔はともかく最近は忙しくてどれもご無沙汰なのよね。 |
どれも、ってことは結構多趣味なわけ? |
色々とつまみ食いしたから。 基本的にはアウトドア派ということになるのかしら。 |
例えばどんなよ。 |
メジャーな球技には一通り混ざれるわよ。 基礎体力で誤魔化しが効くへたくそなアマチュアレベルなら。 |
広く浅くにも程があるでしょそれ。 もうちょっとやり込んだものはないの? |
子供の頃からずっとやってるとなると格闘技だけど、趣味というよりはもう単なる習慣よ。 |
格闘技というと柔術とかそういうの? |
基本的にはそれがメインね。 でも私がやってたのはスポーツとか武道というよりは、相手を素早くぶっちめることができればなんでもいいってタイプのものだったから、武器もオーケーということで鈍器や刃物もいけるわよ。 |
なんでそんなもんを子供の頃からやってたわけ…… |
ウチの親がねー、治安当局とかにコーチとして呼ばれるくらいには人を投げたりぶん殴るのが得意で、娘にもごく自然にトレーニングをつけたからよ。 |
あまり覚えてないけど三歳くらいからやらされてたらしくて、どうしてこんなことをしなくちゃいけないの、なんて疑問を差し挟む余地すらなかったわね。 気が付いたらもうやってたというか。 |
確かにそれは趣味というより人生の一部すぎるわね…… |
他にはそうねー、一時期は自転車に熱を上げてたこともあったかしら。 |
ロードバイク? |
ええ。今も機会を見付けてはたまに乗ってるわよ。 |
あとは狩りとか。 |
か、狩り? |
親戚に森林インストラクター兼旅館経営をしてる人がいて、学生の頃は長期休暇の度に遊びに行ってたのよ。 だから毎年毎年そこで山を駆け回ってはライフル撃ちまくってたわ。 |
そういうわけで私は山登りとか泳ぐのもオーケーよ。 外でやるもので殆ど手を出してないとなるとあとは車とか飛行機くらいかしら…… |
インドアの方はなんかないの。 |
んー……強いて挙げれば日曜大工? |
今までの話を聞く限りだとそれも結構得意な部類に入りそうね…… |
あまり大掛かりなことはできないけどね。 |
あとは月並みだけど読書とか。ジャンル問わずの乱読だけど。 |
……なんというかあんた随分と充実してるじゃない。 |
私はヴァルキリーになったのは遅めの方だし、十代の頃は色々とやる時間があったのよ。 でも最初に言った通り今は仕事がハードすぎてさっぱりね。 今も人をぶん殴ったり銃を撃ったりはしてるけど娯楽でやってるわけじゃないし。 |
で、私の趣味についてはこんなところでいいのかしら? |
あー、うん、いいと思うわよ…… |
じゃあそういうことで。 |